研究課題
基盤研究(C)
YB-1 の統合的理解にむけて、本年度は発現プラスミドの作成と臨床試料での発現解析を進めた。1.発現プラスミドの作成と機能解析 YB-1の各ドメインもしくは隣り合う2つのドメインをカバーする発現プラスミドの作成を進めた。YB-1の核内機能に関しても報告があることから、cDNAのC末端に核移行シグナルを融合できるベクターに挿入した。ヒトがん細胞に導入し現在その発現について解析、発現を確認後、安定発現株の作成を開始した。乳がん細胞株MCF7はYB-1のみならずdbpAとdbpC/Contrinを発現しており、コールドショックドメイン蛋白ファミリーすべてを発現しているユニークな細胞であるが、特異的siRNAによるノックダウン実験の結果、YB-1のみが細胞増殖に関与することが明らかとなり、成果をまとめている。2.YB-1結合マイクロRNA YB-1の免疫沈降後、RNAを抽出しマイクロRNAの発現プロファイル解析した。主たる結合マイクロRNAは全く報告のない機能未知であり、発現ベクターを用いた、増殖解析を進めている。3.臨床試料での発現解析 免疫組織染色に適したオリジナル抗体をすでに作成していたので、視点を変えた発現解析を病理学の共同研究者と討議した。進行胃癌ではYB-1の強発現と肝転移がよく相関し、予後不良であることが判明した。また乳がん細胞株MCF7にYB-1発現プラスミド導入株を作成した。YB-1導入株ではcMYCやHER2の発現が亢進し、抗エストロゲン剤の感受性が低下した。一方ノックダウンではこれらの発現は低下するが逆にERαの発現が亢進した。導入株は細胞増殖G1期停止や細胞死は明らかに抑制されていた。一方YB-1は腫瘍新生血管内皮に発現することを以前報告したことから、血管内皮由来の腫瘍での発現とその意義について解析し、現在投稿準備中である。
2: おおむね順調に進展している
24年度予定の約60%は達成している。さらに25年度予定の研究も一部先行させて実験を行なったことにより、研究計画は順調に進んでいると判断している。一部計画順序の変更理由として、会合分子の解析は多くのグループから報告があり、より独創性が高く、全く解析されていないYB-1結合マイクロRNAの発現プロファイル解析が新しいマイクロRNAを介したYB-1機能と細胞機能との関連の発見につながると考えている。
上流の制御分子を用いた解析は、残念ながらかなりの報告がされてきており目新しい研究とはなりにくく、今年度は24年度に開始した1と2の解析を主に進め、結果を出すことに鋭意努力する。
初年度はプラスミド作成と免疫組織染色が経費としてあまり必要性が少なかったが、唯一アレイ解析に研究費の大半を費やした。そこで来年度への繰り越し申請を行った。来年度に繰り越した160万円については、最初の申請額190万円からその他論文投稿分30万円を除いた額に相当するので、初年度予定していた申請通りに使用したいと考えている。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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