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2012 年度 実施状況報告書

散発性小脳髄芽腫発生モデルの構築とがん微小環境の作用

研究課題

研究課題/領域番号 24501324
研究種目

基盤研究(C)

研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

柳沼 克幸  公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 研究員 (40182307)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード国際研究者交流
研究概要

散発性Medulloblastomaを発生するマウスモデルシステムの構築を目的として、新たに作製した、野生型のPtc1(S/S)/R26CreERT2マウスの小脳組織に、sporadicなPtc1遺伝子変異を持つ細胞を出現させる方法としては、40HT(Tamoxifen)を含む微小粒子を組織内に移植し、その周辺細胞のCreERを活性化することによって変異を導入する手法をとった。また、別の手法としては、Ptc1変異を導入した小脳外顆粒層細胞(EGL)を野生型マウスの小脳に直接注入する方法も採用した。Ptc1変異の導入には、小脳外顆粒細胞を生後7日の小脳組織から採取して細胞培養系に移し、培養プレート上で40HT処理を行った。
これらの手法によるPtc1変異の導入後の経過観察結果からは、数日で、小さな増殖巣が出現することが観察されるが、その後の進展はみられず、強いアポトーシスシグナルが検出されて腫瘍形成まで至らない現象が観察された。免疫組織学的な解析からは、増殖巣に、脳内の免疫細胞である活性化microglia細胞の激しい侵入現象がみられて、これが増殖阻害の原因となっている可能性が示唆された。ただし、Ptc1ヘテロ接合体マウスに発生したMedulloblastomaの組織を、同様に解析すると、腫瘍組織内に活性化microglia細胞の蓄積がみられること、また、腫瘍に至る前段階の異常増殖巣(PNC)から活性化microglia細胞の侵入は始まっていることが観察されたことから、単純に、モデル系における活性化microglia細胞の侵入現象そのものがアポトーシス誘導の原因となっているとは言えず、腫瘍関連microglia細胞 (TAM: tumor-associated macrophages)の関与の仕方が腫瘍の進展を左右する可能性を示唆する新たな問題点が明らかになってきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

腫瘍発生のモデル実験から、Medulloblastomaの腫瘍組織に免疫細胞であるMacrophageの蓄積が起きていることが明らかになり、周囲の微小環境からの相互作用も腫瘍形成に関係することが示された。この事実は、今回の微小粒子を小脳組織に移植する方式をとるモデル実験系では、移植の際に組織を一時的に損傷することは回避出来ないため、このこと自体で免疫系細胞の集積を誘発してしまうことから、腫瘍発生の初期過程の解析を難しくする可能性を示すこととなった。したがって、より周辺組織への損傷の少ない、遺伝子変異誘発の方式を検討する必要性があり、その検討に時間を取られた結果、当初計画では達成予定の、遺伝子変異誘発のタイミングを小脳の発生時期からその後の成体までの各時期に変化させ、各時期における腫瘍前駆細胞の出現を検討する実験の実施が遅れることになった。

今後の研究の推進方策

i) 前年度から持ち越した実験として、モデルマウスの小脳発生過程におけるPtc1遺伝子変異導入時期と腫瘍形成能との関係を明らかにする。
ii) Ptc1アレルが、野生型のホモ接合体のマウスと、変異型Ptc1をもつヘテロ接合体マウスの2種類に対して、遺伝子変異培養細胞、あるいは、腫瘍培養細胞の移植を行い、Ptc1の異なる遺伝子型を持つ組織環境が、腫瘍形成に及ぼす影響を解析する。
iii) 腫瘍発生モデルマウスを用いて、初期増殖巣の消失に関わるアポトーシス誘導の際の遺伝子発現を知るために、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行い、アポトーシスに関連する可能性のある候補遺伝子群の探索を進める。
iv) 腫瘍組織由来の培養細胞系や、顆粒前駆細胞(GNP)の初代培養細胞系を確立し、増殖細胞と周辺組織細胞との間の相互作用をIn Vitro実験系を用いて解析を行う。また、アポトーシス関連の候補遺伝子の培養細胞系での機能解析も進める。

次年度の研究費の使用計画

免疫組織学的解析のための各種試薬キットおよび各種抗体の購入費が主たる経費となる。その他に、遺伝子発現解析のための各種プライマーの合成費用、マイクロアレイ等の購入費、また、神経細胞培養用の各種試薬、各種培養用実験器具の購入費が必要である。また、マウスを用いる動物実験が不可欠なため、飼育に必要な実験器材の購入とマウスの飼育の状況に応じて、実験補助者の応援を依頼する場合もあり、実験補助者に対する謝金も、実験を遂行するうえで準備する必要のある経費である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 小脳Patched1遺伝子の散発的不活化と髄芽腫の発生2012

    • 著者名/発表者名
      柳沼 克幸、河口 徳一、野田 哲生
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      ロイトン札幌 札幌市( 北海道 )
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [図書] 「疾患モデルの作製と利用-がん」2012

    • 著者名/発表者名
      柳沼 克幸、野田 哲生
    • 総ページ数
      P172-180、 9ページ
    • 出版者
      (株) エル・アイ・シー

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公開日: 2014-07-24  

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