• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

活性変異型Rasによる細胞老化を克服するがん進展機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24501327
研究種目

基盤研究(C)

研究機関独立行政法人国立がん研究センター

研究代表者

上北 尚正  独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (50373402)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードRas / CDCP1 / Autophagy
研究概要

ドキシサイクリン(Dox)により活性型Rasによって細胞老化を起こす正常不死化細胞は、空胞化を伴った細胞死を誘導する。しかし、細胞の形状的変化観察で、細胞死を起こさない細胞が存在することを発見した。その時、膜型タンパク質CDCP1のリン酸化と蛋白質発現の上昇が確認された。その後、活性型Rasによる空胞化耐性細胞株を樹立し、元細胞株と比較するとCDCP1発現が上昇していることを発見した。さらに耐性細胞株に対してCDCP1発現抑制をかけると、耐性細胞株に再度空胞化が起こり、細胞死が起こることが明らかとなった。以上の結果から、活性型Rasを介した細胞の空胞化及び細胞死にはCDCP1が関与することが明らかとなった。CDCP1抑制による細胞死には、Caspaseを介した細胞死ではなく、autophagyを介した細胞死が関与することを明らかにし、空胞化において、CDCP1を介したautophagyに重要であることを明らかにした。
CDCP1シグナルの1因子であるPKCδに結合する因子を同定するためにPKCδのC末端にFLAG-tagを発現する細胞株を樹立し、FLAGによる免疫沈降で結合タンパク質を回収を試みたが、結合因子を見つけるに至っていない。PKCδは細胞の核内での機能をつかさどる因子と細胞膜直下で働く因子があるが、現方法では、結合因子の同定は難しい。よって現在FLAG, HAのタンデムでtagを付加し、さらに、膜局在配列を付加し、膜でのPKCδ結合因子の同定に着手している。
切断されたCDCP1細胞外ドメインを発現するベクターを作成し、細胞に導入したのちにその培養液を他の細胞に添加したが、細胞骨格等に変化は見られなかった。
CDCP1の局在に関して、細胞の資質ラフトに局在することを明らかにした。その際、細胞外基質分解酵素であるMT1-MMPと結合することを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.ドキシサイクリン(Dox)により活性型Rasによって細胞老化を起こす正常不死化細胞を作成し、さらにRasによる空胞化と細胞死に耐性を示す赤部の樹立に成功した。
2.活性型Rasによる空胞化の耐性にCDCP1が重要であることを蛋白質発現の検討とsiRNAによる抑制実験おける空胞化の再構築で明らかにした。
3.CDCP1による空胞化抑制の一つがAutophagy抑制によるものであることを証明し、CDCP1抑制を介した細胞死がcaspaseを介したApoptosisではなく、Autophagic cell deathであることを明らかにした。(論文掲載)
4.CDCP1下流のPKCδ結合因子に関しては、まだ同定出来ず1回の精製では結合因子を取得することは困難と判断した。現在改良法で検討中である。
5.切断されたCDCP1細胞外ドメインは、作成できており、切断ドメインの濃度による最適条件の検討に入っている。
6.CDCP1が細胞外基質分解酵素であるMT1-MMPと資質ラフトで局在することを明らかにした。

今後の研究の推進方策

1.CDCP1が活性型Rasによる空胞化に関与することが明らかになったので、CDCP1を介したAutophagy関連因子の変化、細胞老化因子の変化をCDCP1siRNA等を用いて経時的に検証をおこない、細胞老化とAutophagyとの関連について明らかにする。
2.PKCδ下流因子の同定に関しては、現在FLAG, HAのタンデムでtagを付加し、さらに、膜局在配列を付加し、膜でのPKCδ結合因子の同定に着手している。結合因子を同定し次第、抗体作成および購入をして、結合因子の性状に関して検討を進める。
3.切断されたCDCP1細胞外ドメインによる機能に関する細胞添加の至適条件の検討。
4.CDCP1の脂質ラフト局在における複合体の検証、細胞内での輸送系の検討および、細胞外基質分解酵素MT1-MMPとの関連性に関して検討する。

次年度の研究費の使用計画

1.H24年度研究費未使用分に関しては、FLGA-HA-Tagのタンデムプラスミド作成試薬とPCRに使用するプライマーの購入、精製用のFLAG,HA等の抗体購入および、精製カラムの購入に使用する。
2.H25年度研究費使用分に関しては、細胞培養に使用する培養液、FBS、細胞培養用プレート等の備品の購入に使用する。
さらに、CDCP1およびPKCδのsiRNAの購入、Autophagy阻害剤の購入、細胞老化を検出キット等の購入に使用する。CDCP1の細胞内局在(主にラフト局在)関する研究を進めるための細胞染色用の1次、2次抗体の購入、細胞培養時の細胞外基質の購入等に使用する。
その他に、研究成果発表のための旅費に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Suppression of autophagy by CDCP1 signaling is essential for anchorage-independent survival of lung cancer cells2013

    • 著者名/発表者名
      Uekita et al.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 104 ページ: in press

    • DOI

      (DOI: 10.1111/cas.12154)

    • 査読あり
  • [学会発表] ALKのネガティブレギュレータFLOT1の神経芽腫における役割2013

    • 著者名/発表者名
      富山新太、上北尚正
    • 学会等名
      第19回神経芽腫研究会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      20130223-20130223
  • [学会発表] Oncogenic Ras-ERK signaling requires activation of CDCP1 pathway for promotion of tumor metastasis2013

    • 著者名/発表者名
      Ryuichi Sakai, Takamasa Uekita
    • 学会等名
      9th AACR-Japanese Cancer Association Joint Conference
    • 発表場所
      Maui, USA
    • 年月日
      20130221-20130225
  • [学会発表] Ras-ERKシグナルによる癌の転移能の亢進はCDCP1発現誘導を介する2012

    • 著者名/発表者名
      上北尚正
    • 学会等名
      第71回日本癌学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 新規ALK結合蛋白質Flotillin-1はendocytosisを介してALKシグナルを制御する2012

    • 著者名/発表者名
      富山新太、上北尚正
    • 学会等名
      第71回日本癌学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] CDCP1はRasにより発現誘導され、癌細胞の足場非依存性及び、浸潤・転移に関与する2012

    • 著者名/発表者名
      上北尚正
    • 学会等名
      第21回日本がん転移学会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20120712-20120713
  • [学会発表] Flotillin-1 is a novel ALK binding protein which regulates ALK signaling through receptor endocytosis2012

    • 著者名/発表者名
      Arata Tomiyama, Takamasa Uekita
    • 学会等名
      Advances in Neuroblastoma Research Conference 2012
    • 発表場所
      Tront, CA
    • 年月日
      20120618-20120621

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi