研究課題/領域番号 |
24501331
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
原田 守 島根大学, 医学部, 教授 (50260716)
|
キーワード | 癌 / アポトーシス / オートファジー |
研究概要 |
次年度は、癌細胞選択的に細胞死(アポトーシス)を誘導できるTRAIL分子のヒト膵癌細胞に対するアポトーシス誘導において、抵抗性機序として誘導されるオートファジーを抑制することにより、TRAIL誘導性アポトーシスが増強できるか検討した。オートファジーを抑制する分子として、heat shock protein (HSP) 70の機能を抑制すると同時に癌治療抵抗性に関与すると考えられるオートファジーを阻害することが報告されているpifithrin-mu (PFT-mu) を利用した。まず、4種類のヒト膵癌細胞株(MiaPaca-2、Panc-1、AsPC-1、BxPC-3)のいずれの細胞株にもTRAILの受容体であるdeath receptors (DR4、DR5) を発現していたが、AsPC-1はTRAIL抵抗性であった。他の3種類の細胞株は、TRAILまたはPFT-muの単独処理により濃度依存的なcell viability の低下とアポトーシスの増加が認められたが、両者を併用することにより有意な相加・相乗的な抗癌効果が観察された。また、MiaPaca-2とPanc-1において、オートファジー関連分子であるbeclin-1の発現をsiRNAで選択的に低下させると、TRAILに対する感受性が有意に増強された。また、PFT-muの作用として、癌細胞のNF-kBの活性を抑制することを明らかにした。以上の結果は、ヒト膵癌細胞に発現するdeath receptorsを標的としたTRAILによるがん治療において、PFT-muによりオートファジーを抑制することの有効性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度は、heat shock protein (HSP) 70の機能を抑制すると同時にオートファジーを阻害することが報告されているpifithrin-mu (PFT-mu) を利用して、TRAIL感受性ヒト膵癌細胞株での、オートファジーの防御的役割を明らかにし、TRAILとPFT-muを併用することにより相加・相乗的な抗がん効果が誘導されることを明らかにできた。また、オートファジー関連分子であるbeclin-1の発現をsiRNAで選択的に低下させると、TRAILに対する感受性が有意に増強されることも明らかにした。また、PFT-muの作用として、癌細胞のNF-kBの活性を抑制することを明らかにできた。そして、これらの結果は論文として報告しており、次年度の目的はおおむね達成できたのではと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、免疫不全マウスに、オートファジー関連遺伝子(Beclin1)をshRNAでノックダウンしたヒト癌細胞を皮下注射するxenograftモデルで、TRAILによる治療に対する反応性を比較・検証する。また、マウス同系腫瘍モデル (BALB/c – colon26大腸癌とC57BL/6 – B16メラノーマ) を用いて、マウス癌細胞でのオートファジーを確認後、オートファジー関連遺伝子(Beclin1, ATG5 etc.)をknockdownさせた癌細胞をマウスに接種し、in vivo での免疫療法に対する治療反応性の違いを検討する。また、in vivo でオートファジーを阻害するクロロキンを用いて、癌免疫療法との併用効果を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の実験計画は予定どうり実施できたが、未使用額(100,344円)が生じた。この未使用額も含めて平成26年度は、免疫不全マウスにヒト癌細胞を異種移植して、in vivo でのオートファジーと治療抵抗性の関連性を明らかにする予定である。そのために、マウス購入や siRNA, shRNAなどの消耗品の購入に充てる予定である。 癌細胞のオートファジー関連遺伝子(Beclin1, ATG5 etc.)をsiRNAでknock downして検証するために、これらのsiRNAやtransfection reagentを購入する。さらに、オートファジー誘導剤であるrapamycinやオートファジー阻害剤である3-methyladenineをin vivoに投与して効果を検証する予定である。
|