研究課題
昨年度、従来のマウスMIF DNAワクチンのデザインを基に新規MIF-DNAワクチンを立案、設計した。従来用いてきたThエピトープは破傷風毒素(TTX)由来のものだが、本研究では新たに卵白アルブミン(OVA)、卵白リゾチウム(HEL)、さらに破傷風毒素に関しては活性を増強することが知られている TET830 をはじめとする数種類を候補とした。これらのタンパク質では、それぞれQAVHAAHAEINE、SALLSSDITASVNCA、AQYIKANSKFIGITELが高い免疫増強活性を持つことが知られており、これらを含む新規MIFワクチンをデザインした。従来型ワクチンではMIF立体構造の2番目のループをThエピトープで置換した変異MIFをワクチンとしたが、中和抗体誘導に効果的であったので本研究でもまず最初に同じ位置にエピトープを置換挿入することとした。本年度はこの方針に基づき、現行のワクチンを鋳型としてThエピトープをコードするプライマーを用い、上記のThエピトープを含む新規改変型MIF発現プラスミドの2種類(OVA型とHEL型)を作製、大量調製を行った。また、TET型も作成中である。一方、AOMとDSSによる炎症誘発大腸癌モデルにおいてMIFを含むサイトカインやケモカイン、並びにがんの増殖と進展に関わる遺伝子の発現を経時的に解析した。その結果、大腸発がん誘導70日前後をピークとした大腸におけるMIFの発現に呼応してサイトカイン(IL-1a、IL-4、GM-CSF)、ケモカイン(CCL12、CXCL13)やMMP3の発現がピークに達していた。電気穿孔法によるMIF-DNAワクチン接種法は、抗MIF抗体産生を誘導できたが、発がん抑制効果は不十分であったので、Hydrodynamic gene delivery法を用いてMIF-DNAワクチン接種したところ、発がん抑制効果が確認できた。
2: おおむね順調に進展している
新規ワクチンのうち、2種類を作出し、動物実験に供するに足る量の調製が済んだ。またもう1種類の作成も順調に進んでいる。従来型ワクチンを用いた炎症誘発大腸癌モデルにおいて、各種液性因子の動態や遺伝子の発現の解析を行った。さらに、予備的ではあるものの、Hydrodynamic gene delivery-MIF-DNAワクチンによる発がん抑制効果を確認している。
北海学園大学小山:新規に開発したワクチンの大量調製システムを構築する。またワクチンによる抗MIF中和活性の測定システムの構築を試みる。三重大学加藤;A Hydrodynamic gene delivery法を用いてMIF-DNAワクチンを接種する。血中の抗MIF抗体価とMIF量をELISA法にてモニターしつつ経時的に大腸組織の病理と炎症性サイトカイン発現を解析し、大腸炎症罹患患者を摸した治療モデル系に於けるMIF-DNAワクチンの大腸発がん抑制作用を明らかにし、治療法としての有効性を以下の項目を検討することで明らかにする。①免疫組織染色により炎症関連発がんのバイオマーカーである8-NGと酸化的DNA損傷の指標として広く用いられている8-oxodG発現を解析する。また大腸前癌病変の指標であるaberrant crypt foci(ACF)b-カテニン蛋白蓄積大腸異常陰窩巣(BCAC)の発現を指標として早期の発がんが抑制されるかを検討する。②HE染色により、大腸がんの発生率、進行度合いを明らかにする。③免疫組織染色ならびにリアルタイムPCR法にて、大腸炎症関連発がんに関与しているIL-1b,IL-6,IL-23,TNFaなどの炎症性サイトカインやCOX-2発現におよぼす、MIF-DNAワクチンの作用を明らかにする。
教育活動に従事する時間が予想を超え、研究に携わる時間が限られた。新規ワクチン作製は結果的に順調に推移したが、ワクチンの評価を行う時間を確保できなかったため、次年度使用額が生じることとなった。該当年度でやり残したワクチンの作成と大量調製、評価に次年度使用額に相当する費用をあてる。ワクチンの大量調製システムの構築、ワクチンによる抗MIF中和活性の測定システムの構築を試みる。
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Vaccine
巻: 31 ページ: 2110-8
Toxicology and Applied Pharmacology
巻: 273 ページ: 10-18
European Journal of Immunology
巻: 43 ページ: 989-1000