研究課題/領域番号 |
24501335
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
高久 俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (50445813)
|
キーワード | 腫瘍免疫 / 漢方薬 |
研究概要 |
漢方薬と腫瘍ワクチン併用による原発腫瘍増殖抑制効果の検討 漢方薬を腫瘍ワクチンのアジュバントとして用いることで相乗的な抗腫瘍効果の増強が期待できるか否かをマウス結腸癌細胞株CT26の経皮的投与モデルで評価した。まず、漢方薬単独の抗腫瘍効果を検討するため、マウスを2群に、すなわち①通常(漢方薬非含有)飼料摂餌マウス②漢方薬配合飼料摂餌マウスに分けて、同腫瘍細胞を経皮的に接種した。するといずれの群においても腫瘍は有意差なく増殖し漢方薬経口摂取のみでの抗腫瘍効果は認められなかった。次にX 線照射したCT26細胞を腫瘍ワクチンとして用い③通常飼料群④漢方配合飼料群に分けて同腫瘍に対する抗腫瘍効果を検討したところ、漢方配合飼料を摂餌したワクチン群において、通常飼料を摂餌したワクチン群よりも強い抗腫瘍効果が認められた。以上の結果から、漢方薬は単独では抗腫瘍効果を示さないものの、腫瘍ワクチンとの併用によりシナジー効果を発揮してワクチン効果を増強する可能性が示唆された。更にワクチンと漢方薬を併用したマウスの脾臓細胞中に、CT26を傷害するCD8陽性T細胞が存在することが、in vitro での51Crを用いた同腫瘍に対する細胞傷害活性の測定により明らかとなった。この結果は、ワクチンと漢方併用群で抗腫瘍免疫を担う免疫細胞群としてCT26特異的な細胞傷害性CD8陽性T細胞 (CD8陽性CTLs)が重要な役割を演じている可能性を示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
漢方薬が腫瘍ワクチンとの併用によりシナジー効果を発揮して抗腫瘍効果の増強に寄与する可能性は示せたが、腫瘍肺転移モデルにおける漢方薬の転移抑制効果に関する研究が遅れているため。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 漢方薬と腫瘍ワクチン併用による原発腫瘍増殖抑制効果の検討 昨年度の検討によりCT26経皮的腫瘍投与モデルにおいて漢方薬単独では全く抗腫瘍効果を示さないが腫瘍ワクチンとの併用により有意なシナジー効果が得られることが確認された。そこで本年度はその抗腫瘍効果のメカニズムの解明を目指す。具体的には①漢方併用群で抗腫瘍免疫を担う免疫細胞群の同定②漢方薬が免疫制御系細胞群に与える影響の解析③腫瘍ワクチン効果増強のために最適な漢方内服法の検討を行う予定である。 2. マウス腫瘍肺転移モデルを用いた漢方薬による肺転移抑制メカニズムの解明 昨年度申請者はCT26肺転移モデルにおいて漢方薬投与により若干の肺転移抑制効果が認められたと報告した。しかし、その後の詳細な検討の結果、残念ながら、その抗腫瘍メカニズムに迫れるほどの差を見いだすことができなかった。その理由として野生型BALB/cマウスではtype II NKT細胞など抗腫瘍免疫を負に制御する免疫制御系細胞群が存在し、漢方薬の抗腫瘍効果自体が評価しにくくなっている可能性が考えられた。ところで、このようなtype II NKT細胞の存在しないCD1d ノックアウトマウスにCT26を経静脈的に投与した場合、その肺転移はある程度抑制されることがすでに報告されている。そこでCD1d ノックアウトマウスを1の実験と同様に漢方配合飼料で飼育し、経静脈的に投与した同腫瘍の肺転移がそのシナジー効果により更に抑制されるか否かを検討する。尚、今年度に入手したCD1d ノックアウトマウスは現在in vivoで実験可能な個体数が得られている状況である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度入手したBALB-CD1dノックアウトマウスをin vivoで実験可能な個体数まで増やすのにかなり難渋し時間を費やした結果、特に腫瘍肺転移モデルにおける漢方薬の役割に関する研究に遅れが生じた。従って、予定していた実験の一部が施行できず今年度の研究費に残余が生じ、一部次年度に繰り越すこととなった。 繰り越した研究費は、次年度の研究費とあわせて、その大半を、本研究を遂行するにあたって必要となる実験動物(マウス)、試薬薬品類、培地血清類、プラスチック器具、各種抗体、アイソトープ(51Crや3H)などの消耗品に充てる予定である。また、その一部を、情報交換や学会での研究成果の公表に必要な出張経費および研究成果に関する論文の投稿から掲載までに必要な諸費用の支払いに充填する予定である。
|