研究課題
漢方薬と腫瘍ワクチン併用による原発腫瘍増殖抑制効果の検討漢方薬である人参養栄湯が腫瘍ワクチンのアジュバントとなり得るか否かをマウス結腸癌細胞株CT26の経皮的投与モデルを用いて評価した。まず漢方薬単独の抗腫瘍効果を検討するため、マウスに①通常（漢方薬非含有）飼料あるいは②人参養栄湯エキス末配合飼料を３週間摂餌させた後にCT26を経皮的に接種した。しかし、両群間で腫瘍は有意差なく増殖し、漢方薬経口摂取のみでの抗腫瘍効果は認められなかった。次にX 線照射したCT26細胞を腫瘍ワクチンとして用い①通常飼料群④ワクチン＋通常飼料群⑤ワクチン＋人参養栄湯配合飼料群に分けて同腫瘍に対する抗腫瘍効果を検討した。すると、①群と比較した場合、④群において、ある程度の腫瘍増殖抑制効果が認められたが、⑤群において、統計学的に有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。以上の結果から人参養栄湯は単独では抗腫瘍効果を示さないが腫瘍ワクチンとの併用によりシナジー効果を発揮して抗腫瘍効果を増強する可能性が示唆された。次に⑤群のマウスで実際に抗腫瘍に働く免疫細胞群を同定するため、腫瘍投与前後で同群のマウスを抗CD8抗体で処理しCD8陽性T細胞を除去したところ、その抗腫瘍効果は消失した。従って人参養栄湯を摂餌したワクチン接種マウスで認められる抗腫瘍効果は、腫瘍特異的CD8陽性T細胞に依存することが示唆された。更に、ワクチン効果増強のためには、どのタイミングで漢方薬の摂取が必要かを検討したところ、ワクチン接種から腫瘍接種約１ヶ月後までの継続摂取の必要性を示唆するデータが得られた。尚、今回の研究では、株式会社ツムラより無償提供された人参養栄湯エキス末を使用した。
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