研究課題/領域番号 |
24501337
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石原 武 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (60312948)
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研究分担者 |
多田 素久 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00554239)
三方 林太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60596146)
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キーワード | 膵腫瘍 |
研究概要 |
平成24年度から開始された本研究では、癌が非癌組織と違いWarburg効果と呼ばれる、独自のエネルギー代謝系統を持っていることに着目した上で、膵腫瘍組織に特異的なエネルギー代謝という点に焦点をおいて、新規治療標的の探索を行っている。平成25年度は引き続き、各種膵腫瘍組織とそのペアとなる非腫瘍部膵組織の網羅的メタボローム解析を行った。対象は、新たに外科的に切除された後、速やかに-80℃に凍結された膵癌17例、IPMC 12例、膵管内乳頭粘液腺腫(Intraductal papillary mucinous adenoma=IPMA)1例である。網羅的メタボローム解析はキャピラリー電気泳動-質量分析装置(capillary electrophoresis-mass spectrometry:CE-MS)を用いて行った。グルコースに関しては、液体クロマトグラフィー-質量分析装置(LC-MS)を用いて定量値を算出した。昨年同様、グルコース下流の中心代謝経路(解糖系、ペントースリン酸回路、TCA回路)の他、アミノ酸の異化資化経路やプリン代謝、ピリミジン代謝、尿素回路の中間体につき、臓器1gあたりのモル量(nmol)を算出し、昨年度の検体も含めた計50検体(膵癌27例、IPMC 17例、IPMA 6例)の腫瘍部と非腫瘍部の平均値を比較検討した。そうしたところ、腫瘍部では非腫瘍部に比べて、乳酸の蓄積ならびにグルコースの低下がみられ、これまでの報告のある大腸がん・胃がん同様、Warburg効果を示すことがわかった。また、腫瘍組織での比較ではIPMA⇒IPMC⇒膵癌と生物学的悪性度が高くなるにつれて、乳酸の蓄積ならびにグルコースの低下が進行することが明らかとなった。一方で、以前大腸がん・胃がんで報告された、腫瘍組織でのクエン酸回路後半の代謝物(コハク酸、フマル酸、リンゴ酸)の蓄積は、今回の腫瘍組織の検討では見られず、膵腫瘍組織では大腸がん・胃がんとは違うエネルギー代謝が起こっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵腫瘍組織の網羅的メタボローム解析を行うことで、各膵腫瘍組織のエネルギー代謝の特徴が明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
他の消化器癌(大腸がん・胃がん)と膵腫瘍ならびに各膵腫瘍間での大まかなエネルギー代謝の違いは明らかとなった。今後個々の代謝産物につき詳細に検討してくとともに、研究計画に記載したように、患者血清や膵液などの組織とマッチした生体試料の網羅的メタボローム解析を行うことで、新規マーカーの探索を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画当初、購入予定であった試薬が別の試薬で代替可能であったため繰越しが生じた。 繰り越した金額については試薬を購入予定です。
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