研究課題/領域番号 |
24501343
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高柳 淳 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80245464)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗体 / EGFレセプター / 抗体ライブラリー / リン酸化 |
研究概要 |
(i)抗がん活性を有する既得抗体の作用機序解明と(ii)京レベル以上のレパートリーを有する抗体ライブラリーシステムの作製に分けて記載する。(i)EGFレセプター(EGFR)の発現量の異なる9種の癌細胞について、抗体によるEGFRリン酸化の阻害、ERKリン酸化の阻害、Aktリン酸化の阻害、アポトーシスの誘導を調べた。EGFRリン酸化の阻害について発現量に関係なくリン酸化阻害がみられる細胞とみられない細胞が有り、また、EGFRリン酸化阻害が必ずしもアポトーシスの誘導するとは限らなかった。同様にERKリン酸化の阻害、Aktリン酸化の阻害ともにアポトーシスの誘導するとは限らなかった。 (ii)詳細は省くが数々の創意工夫を導入した新規ライブラリー用のVHおよびVLベクターは完成した。また、抗体遺伝子作製において200本ほどのオリゴDNAを用いて、CDR1~2には位置をずらしながらの連続する2アミノ酸に停止コドンが現れないランダム変異を導入した。さらにCDR3にはプライマー配列に独自の工夫し全てのレパートリーを単一のフレームワーク(抗体遺伝子骨格)に連結した。また、停止コドンが現れないランダム配列を用いて人工CDR3配列も作製し、単一のフレームワークに連結した。この2種のCDR3配列により新規ライブラリーは幅広い抗原種に対してそれぞれ高親和性を有した抗体遺伝子を含んでいると考えている。 またペリプラズマシャペロンベクターにも改良を施し、宿主大腸菌の性能をも向上させた。 現在試験的な小規模ライブラリーを作製し、VH,VL遺伝子配列の健全性およびVH/VL組換えシステムの作動効率を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(i)各種実験に供する組換えIgG抗体の大量調製に手間取ったためであるが、レンチウィルスベクターを利用した安定発現細胞の樹立法を採用し、作業効率が大幅に向上した。このシステムは今後(ii)の課題から単離される抗体クローンに応用が容易なため、研究課題全体としてはパフォーマンスが向上したと考えている。 (ii)大腸菌・培養細胞兼用とした独自の新技術を採用した新規ライブラリー用ベクターの作製に配列上の困難がありクローニングに時間が必要だったことおよび作製後性能評価を行ったためライブラリー作製に供するまでに時間が掛かった。また多くの新規プライマー配列を採用したことにより、PCR条件検討に予想外の時間が必要だったことが影響した。 しかし、一番の技術的難所を克服したことにより、今後の研究計画の進行は予定通りに進むと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(i)(i抗がん活性を有する既得抗体の作用機序解明:主要なEGFR下流のシグナル分子のリン酸化の阻害について統一的に説明可能な結果が得られていないため、細胞障害性を引き起こす主要なパスウェイを探す必要がある。このため、ERK,Akt以外のパスウェイのシグナルを調べて行く。また、使用する癌細胞株も増やし、由来組織によって特徴があるか否かも検討する。 (ii)京レベル以上のレパートリーを有する抗体ライブラリーシステム:早急に新システムの抗体ライブラリーを構築し、研究計画に沿ったスクリーニングを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費・謝金は新規抗体ライブラリーの構築を補助する人員に対するものである。 物品費は、すべて研究遂行のための合成DNA費、プラスチック器具、培地、一般試薬等の消耗品購入に当てる。 旅費は、研究成果発表のため学会参加旅費の予定である。
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