研究課題/領域番号 |
24501344
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
大屋敷 純子 東京医科大学, 医学部, 教授 (20191950)
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キーワード | テロメアRNA / 5-アザシチジン / DNAメチル化 / 骨髄異形成症候群 |
研究概要 |
テロメアRNAはテロメラーゼに対する負の制御など機能性RNAの一つと考えられていることより、応募者は新規がん分子マーカーとして、テロメアRNAに着目した。平成25年度は近年注目されている脱メチル化薬やヒストンデアセチラーゼ阻害剤などのエピジェネテイック分子標的薬がテロメア制御に及ぼす影響を重点的に研究を展開した。 エピジェネティック修飾薬である5-アザシチジン(AZA)は骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome)の治療薬として2010年に日本でも承認されて以来、造血器腫瘍の治療においてもっとも有望な薬として知られている。一方、MDSにおける有効例は約50%で、半数の例は初期治療に反応しない。また、有効例でも早期に耐性を獲得することが知られており、その分子機構は不明の点が多い。そこで、白血病細胞株よりAZA抵抗性株2株を樹立し、AZA耐性獲得には(1) ピリミジン経路の障害(古典的RNA経路)、(2)ゲノム全体の低メチル化、(3) DNA障害/修復経路の障害が関与していることを見いだした(Imanishi and Ohyashiki et al. Constitutive activation of the ATM/BRCA1 pathway prevents DNA damage-induced apoptosis in 5-azacytidine-resistant cell lines. Biochem Pharmacol. 2014, 89(3):361-9.)。 これらのAZA耐性獲得分子機構に関する一連の研究のなかで恒常的なリン酸化ATMの活性化がテロメアRNAの誘導と関係していることを見いだし、さらにはテロメアの3次元構造解析よりテロメア維持機構の破綻がAZA感受性と深く係っていることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のテロメアRNA検出系、定量系の確立を発展させ、年次計画に基づいて平成25年度は(1) in vitroでのエピジェネテイック分子標的薬(ことに5-アザシチジン)によるテロメアRNAの解析がほぼ完了した。ただし目標であった患者試料の解析に関しては、RNAの不安定性、検出感度等の解決すべき問題が残っており、最終年度の課題であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は(1) 方法論的確立、(2) in vitro での検討、(3) 患者細胞での解析の3段階より構築され、最終年度では(3) を中心に、臨床応用を視点において研究を展開する。 まず、AZA耐性株、AZA低感受性株を用いた検討より、AZA獲得耐性の診断マーカーとしてはリン酸化ATM、AZA初期治療無効例の予測にはテロメアRNAの誘導が現時点では有望である。しかしながら、アッセイの煩雑さ、再現性などに関して解決すべきいくつかの問題点があり、この点に関して研究を展開する。 次に、MDS症例における病態解析においてはRNA試料の不安定性など現実的に回避できない問題があることが判明し、この点を配慮して一部研究計画を変更した。すなわち、テロメアRNAの質的、量的変化を診断マーカーとするよりはむしろテロメア構造の三次元変化を指標としたアプローチがより適切ではないかと考え、平成25年度末より3D telomere analysisの系を新たに立ち上げた。 この研究計画の変更は、本研究の大筋の変更ではないが、3D telomere analysisにより、臨床応用の実現により近い成果が得られることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会の旅費が予算額を下回っていたため。 研究成果公表用の英文校正費に使用する。
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