研究実績の概要 |
近年、機能性RNAの一つとしてテロメアC鎖を鋳型としたテロメア配列を有するRNA(テロメアRNA)の存在が明らかになった。テロメアRNAはテロメアへテロクロマチン構造の変化、テロメラーゼの制御などと関係していることが知られているが、その詳細は不明である。そこで、本研究ではがん細胞におけるテロメアRNA定量系を確立し、新規分子マーカーとしての有用性を検証すると同時に、クロマチン構造の変化をもたらすエピジェネテイック分子標的薬の効果予測診断への応用を検討した。 平成24年度は定量系の構築を行い、ヒト白血病細胞株(K562, U937, HL-60)を用いてRNA-FISH法でテロメアRNA定量系を確立した。平成25年度はエピジェネテイック分子標的薬によるテロメアRNAの変化へと研究を進め、アザシチジン抵抗性細胞株におけるATM/BRCA1経路の恒常的活性化とテロメアRNAの発現上昇との関係を見いだした。 最終年度である平成26年度は患者細胞での解析へと研究を進めた(学内の倫理委員会承認番号1979)。すなわち、テロメア短縮とゲノム不安定性と特徴とする骨髄不全症患者細胞を用いてテロメアRNAの発現を検討し、骨髄浸潤の無い悪性リンパ腫患者の骨髄細胞を対照として用いた。その結果、対照の骨髄細胞、未治療の骨髄不全症患者細胞ではテロメアRNAが検出できないか、きわめて低いレベルであるのに対して、アザシチジン抵抗性の患者ではテロメアRNAのシグナル数の有意な増加を認めた。 以上よりテロメアRNAは細胞株のみならず、患者細胞においてもアザシチジン抵抗性と関係していると考えられ、新規分子マーカーとしての可能性が示唆された。
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