研究分担者 |
北川 知行 公益財団法人がん研究会, がん研究所, 名誉所長 (50085619)
山本 智理子 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 主任研究員 (10280629)
川端 一嘉 公益財団法人がん研究会, 有明病院 頭頸科, 部長 (10204760)
竹島 信宏 公益財団法人がん研究会, 有明病院 婦人科, 部長 (70216886)
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研究実績の概要 |
中咽頭の扁平上皮癌(oropharyngeal squamous cell carcinoma:OSCC )には、HPV感染が関与するHPV陽性癌とHPV陰性癌があり、HPV陽性癌の方が治療感受性が高く予後が良好であることからOSCCを2群に分ける必要がある。HPV陽性癌の実態を明らかにし、2群を判別するためのバイオマーカーを検索した。 2005年以後に当施設で生検されたOSCC119例を用いて、HPV検索、年齢、男女比を調べた。病理組織学的特徴は、我々が報告した高リスクHPV感染を伴う子宮頸部の前がん病変であるCervical intraepithelial neoplasiaや癌に特異的に出現する異常核分裂像のEctopic chromosome around centrosome(ECAC)の有無を調べた。HPV検査は、生検のパラフィンブロックからDNAを抽出し、L1領域に設計されたプライマーセットによりLoop-Mediated Isothermal Amplification法でHPV遺伝子を増幅し、電流検出型DNAチップ法で13種(16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68型)の高リスクHPV型別検出するクリニチップHPV (Sekisui)と、ISH法(Wide Spectrum HPV DNA Probe:DAKO)で検索した。免疫組織化学的(IHC)には、p16, p53, Ki67を検討した。 OSCCのHPV陽性癌は58.8%, HPV陰性癌が41.2%。HPV陽性癌は男性が女性の3.7倍、HPV陰性癌では15.3倍であった。HPV型は、16型:72.9%, 35型:5.7%, 18型:2.9%, 複数型:2.8%, 33型:1.4%, 58型:1.4%, ISHのみ+で型不明:12.9%であった。ECACは、HPV陽性癌に72.9%に認められ、HPV陰性癌には2.0%(LAMPH法ではHPV陰性であったが、IHCでp16+の1例)であった。HPV陽性癌でp16(+), p53(-:陰性ないし斑状の陽性)、HPV陰性癌でp16(-), p53(+:癌細胞全体に強陽性)の組み合わせで、約8割がHPV DNA検出結果と一致した。 HPV陽性のOSCCは、約6割であった。HPVの有無を考慮した判定には、ECACが有効なバイオマーカーとなる。
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