研究課題/領域番号 |
24501347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
西尾 誠人 公益財団法人がん研究会, 有明病院呼吸器内科, 部長 (00281593)
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研究分担者 |
石川 雄一 公益財団法人がん研究会, がん研究所病理部, 部長 (80222975)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小細胞肺がん / TTF-1 / 免疫組織化学 / 予後 |
研究概要 |
小細胞肺がん(SCLC)は、喫煙などの吸入性発がん因子と強く関連し、それゆえ肺門部から発生する中枢型肺癌と考えられてきた。しかし、日常診療では肺の末梢に原発巣を有するSCLCが少なくなく、また、大部分のSCLCは末梢肺のlineage markerであるTTF-1を発現している。以上から我々は「小細胞肺がんは末梢型肺がんであり、腫瘍の増殖にはTTF-1が関与している」と仮説を立て検証を行う事とした。 当院で組織学的にSCLCと診断され、かつ原発巣の特定が可能な96例について、がんの発生部位とTTF-1の発現の有無を検討し、両者の相関や予後について検討を行った。がんの発生部位はCT画像で原発巣が肺の亜区域気管支以降に存在するものを末梢型、それよりも中枢側に存在するものを中枢型と定義した。TTF-1の発現はホルマリン固定パラフィン切片を用いて免疫組織化学的に評価した。 96例中、69例(75%)はCT画像上、末梢型と判定され、79例(82%)にTTF-1の発現を認めた。原発巣とTTF-1の発現の関連性の検討を行った結果、末梢型の症例の大部分(69/72=96%)はTTF-1陽性であり、中枢型の症例の大部分はTTF-1陰性であった(14/24=58%)(p<0.001, Peasonのカイ二乗検定)。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では3つの因子(末梢型、TTF-1陽性、進行病期)が有意な予後不良因子であった。Kaplan-Meier法を用いたlog-rank検定でも同様に、末梢型は中枢型よりも有意に予後不良であった(生存期間中央値17.5カ月 vs 50.4か月、p=0.009)。末梢型と中枢型のSCLCでは予後が異なることから、両者は発がん機構の異なる集団として層別化ができ、新たな治療戦略の確立に役立つ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに研究が進捗中である。研究成果については学会発表を行い、現在論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
1、肺がんの発生部位およびTTF-1の発現の有無により層別化されたSCLCにおける遺伝子発現解析:これまでの研究結果から、SCLCの原発巣の発生部位によって予後に違いがみられたことから、今回の研究対象症例の中で、新鮮凍結組織材料が得られた症例について、核酸を抽出し、マイクロアレイ解析を行う。遺伝子発現・非コードRNAの発現などのデータを取得し、層別化された群毎の遺伝子発現を比較検討する。また、GTBシステムで保存された正常肺が存在する場合には正常肺との比較検討も行う。 2、SCLC細胞株を用いたTTF-1の発がん機構への関与の検討:これまでの研究結果から、TTF-1の発現の有無により予後が異なる可能性が示唆されたことから、TTF-1がSCLCの増殖に関与する転写因子であるかどうかを検討するため、SCLC細胞株を用いた遺伝子導入実験を行う。 (1) TTF-1の発現状況の確認:当会で樹立した細胞株3種を含む約20種類のSCLC細胞株について、TTF-1の発現の有無を免疫組織化学およびウエスタンブロッティングにより確認する。TTF-1の発現を確認できた細胞株についてはTITF1遺伝子の増幅の有無をFISH法により評価する。 (2) RNA干渉(RNAi)実験:TTF-1の発現が良好な細胞株を3種類程度選択し、ライフテクノロジー社のlipofectamine RNAi MAXを用いてRNAi実験を行い、腫瘍細胞の増殖能や浸潤能、アポトーシスの誘導などの変化を解析する。また、マイクロアレイによる遺伝子発現解析で高発現しているmiRNAが検出された場合には、同様にRNAiによるknock down実験を行い、腫瘍細胞の増殖能や浸潤能などについて評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に下記に使用する予定である。 1、遺伝子発現解析に関わる薬品の購入 2、遺伝子導入実験に関わる薬品、培養細胞等の購入 3、成果発表に関わる費用(旅費、翻訳・校閲料、論文投稿料等)
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