研究課題/領域番号 |
24501347
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
西尾 誠人 公益財団法人がん研究会, 有明病院 呼吸器内科, 部長 (00281593)
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研究分担者 |
石川 雄一 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 部長 (80222975)
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キーワード | 小細胞肺がん / TTF-1 / マイクロアレイ / 予後 |
研究概要 |
我々は「小細胞肺癌(SCLC)の多くは末梢型肺癌であり、TTF-1の発現と関連が認められ、さらにはTTF-1が癌の悪性度に関わっている」との仮説を立て、H24年より研究を開始した。初めに当院で組織学的にSCLCと診断され、かつ原発巣の特定が可能な症例96例によるがんの発生部位とTTF-1の発現の有無を確認し、両者の相関や予後への影響について検討を行った。その結果、96例中、69例(75%)はCT画像上、末梢型と判定され79例(82%)にTTF-1の発現を認めた。原発巣とTTF-1 の発現の関連性の検討を行った結果、末梢型の症例の大部分(69/72=96%)はTTF-1陽性であり、中枢型の症例の大部分はTTF-1陰性であった(14/24=58%)(p<0.001, Peason’s χ2検定)。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では3つの因子(末梢型、TTF-1陽性、進行病期)が有意な予後不良因子であった。末梢型と中枢型のSCLCでは予後が異なる事から両者は癌の悪性度が異なる集団として層別化できる可能性が示唆された。 これらの結果をもとに、予後に差がみられた末梢型と中枢型で遺伝子発現の違いを検証するために、本研究の対象症例で外科的に切除され新鮮凍結材料が保存されている14症例について、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、末梢型で高発現している遺伝子群には、SynaptophysinやChromogranin Aといった神経内分泌癌に関わる遺伝子が含まれており、本研究で着目したTTF-1も高発現していた。この結果はGene ontology(GO)解析でも確認され、末梢型で有意に高発現している遺伝子群にはnervous system development、neurogenesisなどの神経内分泌に関わるGO termが多く含まれていた。一方で、中枢型で高発現している遺伝子群におけるGO解析では、system development、anatomical developmentなどの発生に関わる遺伝子が多く含まれており、両者は癌としての性質が異なる事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに研究が進捗中である。研究成果については学会発表がなされ、現在論文投稿が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
1、SCLC細胞株を用いたTTF-1の発がん機構への関与の検討 TTF-1がSCLCの増殖に関与する転写因子であるかどうかを検討するため、SCLC細胞株を用いた検討を行う。 (1) TTF-1の発現状況の確認:約15種類のSCLC細胞株について、TTF-1の発現の有無を免疫組織化学およびウエスタンブロッティングにより確認する。TTF-1の発現を確認できた細胞株についてはTITF1遺伝子の増幅の有無をFISH法により評価する。 (2) RNA干渉(RNAi)実験:TTF-1の発現が良好な細胞株を3種程度選択し、ライフテクノロジー社のlipofectamine RNAi MAXを用いてRNAi実験を行い、腫瘍細胞の増殖能や浸潤能、アポトーシスの誘導などの変化を解析する。また、遺伝子発現解析で高発現しているmiRNAが検出された場合には、同様にknock down実験を行い腫瘍細胞の増殖能や浸潤能などについて評価する。
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