研究課題/領域番号 |
24501349
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
加藤 俊介 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40312657)
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研究分担者 |
角道 祐一 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (10396484)
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キーワード | オートファジー |
研究概要 |
ドキシサイクリン存在下でオートファジー関連遺伝子を安定的に発現抑制できる細胞株の樹立のために、ATG7, BECN1 shRNAが組み込まれている Biosettia社のpLV RNAi systemの発現カセットを利用した。樹立細胞株についてはHCT116を選択したが、IRES配列下での発現制御を受けるためか、セレクションマーカーの一つであるGFP, RFPの発現が目視レベルで困難であった。そのためマウス実験への移行は遅れている状況である。 一方、in vitroの実験では血管新生阻害剤投与状態を代用するものとして、飢餓状態、CDK阻害剤投与状態でのオートファジー誘導能の変化とオートファジー阻害(ATG5, BECN1 siRNAまたはクロロキンを使用)による細胞状態の発現状況について確認実験を行った。用いた培養細胞株はヒト乳癌細胞株のBT474、MCF7、MDA-MB231、MDA-MB435S、SKBr3、ヒト肺腺癌細胞株のA431、ヒト胃癌細胞株のNCI-N87、ヒト大腸癌細胞株のSW480、および正常細胞株としてヒト線維芽細胞株のKMST-6を用いた。飢餓状態では、すべての細胞株においてオートファジーが誘導され、その状態でオートファジーを阻害するとアポトーシスが観察された。一方、CDK阻害剤処理では、一部の細胞株にのみオートファジーが引きこされ、オートファジー阻害するとこれら細胞株ではアポトーシスが引き起こされたが、オートファジーが誘導されなかった細胞株においては、オートファジー阻害でもアポトーシスは誘導されなかった。正常細胞株のKMST-6はCDK阻害剤によるオートファジー誘導は観察されなかった。 これらの結果から、CDK阻害剤によるオートファジー誘導能の有無はオートファジー阻害の併用療法の抗腫瘍効果に関するバイオマーカーと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
各種培養細胞株を用いたin vitroでのオートファジー関連遺伝子の発現抑制した際のオートファジー阻害剤との併用効果についてのデータは順調に収集できており、これまで国内外の学会で発表を行ってきた。in vitroの実験については、さらに培養細胞株の種類を増やしてデータの収集を図るとともに、CDK阻害剤によるオートファジー誘導能が引き起こされる細胞株と引き起こされない細胞株の差異についての分子メカニズムの解析について着手している。 一方、これらin vitroでの研究成果を元に、in vivoでの実験に着手するため、蛍光蛋白質(GFP, RFP)マーカーとした安定的オートファジー関連遺伝子発現抑制細胞株の樹立を試みているが、現在のところ樹立に成功していない。ドキシサイクリン存在下でオートファジー関連遺伝子(ATG7, Beclin-1)のsiRNA発現誘導とIRESプロモーター下でマーカー蛋白質(GFP, DsRed)の発現を確認できるベクター複数種類を用いたが、オートファジー関連遺伝子の発現抑制とマーカー蛋白質の発現誘導が確認できていない。さらにレトロウィルス(lentivirus)を用いて安定的オートファジー関連遺伝子発現抑制細胞株の樹立も試みたが、やはりマーカーの確認が目視で難しい状況であり、現在はin vitroの解析を中心に研究を行っている状況である
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の異動に伴う研究環境の変化のため、今後研究方針の修正が必要な状況である。現在まで安定的オートファジー関連遺伝子発現抑制細胞株の樹立に苦慮している。ヌードマウスへの可植性も考慮して培養細胞を選択する必要性もあるため、選択する細胞株は制限されること、さらには動物実験施行などに関する研究環境のセットアップに時間がかかることからin vivoでの研究は難しい状況にある。 これに対して、今後はin vitroの実験を中心に分子メカニズムに関する情報の収集に努める予定である。具体的にはCDK阻害剤のキナーゼ活性阻害の特異性に関する検証が必要であると考えている。これまで調べてきた培養細胞株を用い、各種CDKあるいはcyclinに対するsiRNAを用いてCDK阻害剤と同様な効果(オートファジー誘導能、オートファジー阻害剤あるいはオートファジー関連分子のノックダウンとの併用療法によるアポトーシス誘導能)が得られるか検証を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことおよび安定的オートファジー関連遺伝子発現抑制細胞株の樹立に時間がかかりin vivo実験への移行が遅れたことによる未使用額である。今後研究計画の修正が必要だが、平成26年度請求額と合わせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。 今後はin vitroの実験を中心に分子メカニズムに関する情報の収集に努める予定である。具体的にはCDK阻害剤のキナーゼ活性阻害の特異性に関する検証が必要であると考えている。これまで調べてきた培養細胞株を用い、各種CDKあるいはcyclinに対するsiRNAを用いてCDK阻害剤と同様な効果(オートファジー誘導能、オートファジー阻害剤あるいはオートファジー関連分子のノックダウンとの併用療法によるアポトーシス誘導能)が得られるかの検証を行う予定である。
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