研究課題/領域番号 |
24501353
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
笠原 恵美子 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (30468269)
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研究分担者 |
久保 秀司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10441320)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗がん剤耐性 / ミトコンドリア / 中皮腫 / グルココルチコイド |
研究概要 |
がん細胞では解糖系が亢進している事が古くから知られている。我々は、ミトコンドリアDNAを欠損したヒトがん細胞を確立して種々の抗がん剤感受性を検討し、この古典的現象が『ミトコンドリアを放棄する事により悪性化と多剤耐性が増強の一翼を担う事』を明らかにしてきた。本研究ではストレス応答において重要な因子であるグルココルチコイドが、ミトコンドリア代謝を制御して抗がん剤作用機構へ及ぼす影響を検討した。 悪性中皮腫は、未だ標準的治療法が確立されていない極めて予後不良の悪性腫瘍である。薬剤反応性における個体差や耐性獲得がしばしばみられるが、その作用機序は不明な点が多い。in vitroにおいてヒト中皮腫がん細胞株に、低濃度グルココルチコイド(ストレスにより上昇してくる濃度と同程度)を処理すると、シスプラチンによるミトコンドリア傷害が抑制され、殺細胞作用が著明に低下した。また、マウスにグルココルチコイドを投与するとシスプラチンの薬剤感受性が有意に低下するが、グルココルチコイド分泌不全のマウスでは感受性が上昇することが明らかになった。以上のことより、生体のストレス応答時に産生されるグルココルチコイドが、ミトコンドリア依存性の抗がん剤の感受性を著しく低下させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ミトコンドリア代謝を制御するストレス関連ホルモンであるグルココルチコイドに焦点を当て、生体のストレス応答時に産生されるグルココルチコイドが抗がん剤感受性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は、in vitroにおいてヒト中皮腫細胞株の抗がん剤(シスプラチン;DNA標的型抗がん剤)感受性にグルココルチコイドが影響を及ぼす事、およびマウスを用いた in vivo実験においても同様にグルココルチコイドによる影響を示す実験結果が得られ、当初の計画通り今年度の研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られた結果より、in vitroにおける実験に加えてマウスを用いたin vivo試験も精力的に行う予定である。昨年度の研究により、ストレス時に血中へ分泌される濃度のグルココルチコイドにより抗がん剤(シスプラチン)の薬剤感受性が低下することが明らかとなったので、今年度は生体(マウス)に播種した癌細胞への抗がん剤感受性の検討とその作用機序を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては、研究材料として実験動物(マウス)を使用し、動物実験委員会の承認を得た上で、実験動物の取り扱いに関する指針に基づく法令を遵守して実施される。社会的コンセンサスが必要とされている研究や個人情報の取り扱いに配慮する必要がある研究等には該当しない。 細胞培養のメインテナンスに必要な培地や血清などを購入(約10万円)する。また、実験動物として、マウスを購入する。マウスの数はコントロール群とストレス負荷群、および種々の抗がん剤投与による作用の検討等を考慮に入れる。飼育にかかる経費(餌代、ケージ代など)や維持費と合わせると、約30万円を見込んでいる。マウスのストレス負荷の程度を検討するために、各種ストレス関連蛋白の組織中および血中濃度をELISAキットにより測定する。生体における各種抗がん剤の治療評価を非侵襲的に行うために、in vivo imaging systemを用いて検討(約20万円)する。抗がん剤耐性機構の解明のために分子生物学的な検手法を用いて解析する(約30万円)。その他、試薬(抗がん剤の購入など)および、その他の試薬や消耗品代に約10万円を見込んでいる。情報収集のための学会参加や学会発表の旅費として約10万円を計上する。 以上から、計上した研究経費は必要不可欠であり、妥当であると考えられる。
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