本研究は、肝細胞癌の治療のための有用な新規分子ターゲットの発見と、肝発がんの機序の解明を目的とした。肝癌細胞株を用いて、canopy 2 homolog (CNPY2)、cache domain containing 1 (CACHD1)、immediate early response 5-like (IER5L)及びWD and tetratricopeptide repeats 1(WDTC1)のsiRNAトランスフェクションを行い、in vitro機能解析を行った。CNPY2及びCACHD1をノックダウンした細胞(CNPY2kn;CACHD1kn)の増殖及び成長率がsiRNAコントロール細胞に対して有意に減少していることが認められた。細胞浸潤アッセイの結果により、CNPY2kn細胞において浸潤活性の有意な抑制が観察された。CNPY2knとCACHD1kn細胞のプロテオーム及びIPA解析の結果により、発現変化が見られた蛋白質の上流調節因子であるNFE2L2、SP1、HNF1A及びc-mycとN-myc(CACHD1knのみ)の活性の抑制が認められた。次に、肝細胞癌細胞株(Huh7)を皮下(xenograft)に移植したヌードマウスを用いて、CNPY2及びCACHD1のsiRNAをマウスの尻尾の静脈に投与した。さらに、CNPY2及びCACHD1及びコントロールの安定ノックダウンHuh7細胞株を作成し、ヌードマウスを用いて、xenograftモデルを行った。CNPY2及びCACHD1のsiRNA投与群及び安定ノックダウン細胞株投与群では、腫瘍の成長率及び細胞増殖の有意な減少が認められた。さらに、CNPY2及びCACHD1遺伝子をCOS1及びCOS7細胞にノックインしたところ、CNPY2及びCACHD1ノックイン細胞の成長率や浸潤活性の上昇が認められた。CNPY2及びCACHD1ノックイン細胞のプロテオーム解析を行った結果により、CNPY2及びCACHD1蛋白質が細胞骨格関連蛋白質であり、TGF-betaシグナリング関連蛋白質であることが認められた。今回の結果より、CNPY2及びCACHD1は肝細胞癌において、細胞増殖及び浸潤活性において重要な役割を持ち、治療のための新規分子ターゲットになりうる可能性が示された。
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