本課題「Srcファミリーキナーゼの悪性腫瘍進展での役割の解明と治療への応用」において、初年度は、Srcファミリーキナーゼ(SFK)による中皮腫細胞のアポトーシス誘導機序の解析を行い、Fyn 欠損した中皮腫がSFK に感受性であり、SFK処理により、さらにLynが抑制され、アポトーシスに誘導されることを報告した。本課題2年目では、中皮腫細胞のスフェロイド形成とアポトーシスへの影響および、SFK感受性への影響」を検討した。その結果、中皮腫細胞はスフェロイド形成すると、Srcファミリーキナーゼ(SFK)の発現が上昇しまた、アノイキス耐性となりアポトーシスが減少することを見いだした。本課題3年目の今年度は、これをさらに発展して検討した。Srcファミリーキナーゼ阻害剤はスフェロイド形成によるアノイキス耐性を解除しアポトーシスを誘導した。また、スフェロイド形成により抗腫瘍剤シスプラチンに耐性を示すが、Srcファミリーキナーゼ阻害剤はシスプラチンの殺細胞効果を増強させた。このように中皮腫細胞のスフェロイド形成はSrcファミリーキナーゼを活性化させアノイキス耐性を誘導した。一方、Srcファミリーキナーゼ阻害剤はアノイキス耐性を解除し、シスプラチンの抗腫瘍効果を増強した。
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