研究課題/領域番号 |
24501362
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
芦澤 忠 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (10443441)
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研究分担者 |
小郷 尚久 静岡県環境衛生科学研究所, その他部局等, その他 (20501307)
秋山 靖人 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (70222552)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
約10万の化合物ライブラリーの中から840化合物を選抜し、スクリーニングプレート化した。化合物の選抜方法としては、LipinskiのRule of five が知られているが、構造展開がしやすいように、分子量350以下の低分子化合物を最低条件とし、血液脳関門を通過できない4級アンモニウム塩構造や、生体内で分解しやすい反応性官能基をもつ化合物を除外した。残りの化合物について、Star DropTMによって算出されたoral CNS ADMET scoreを参考に、構造的に多様性のある化合物群を選び出した。また既存の経口抗悪性神経膠腫剤テモゾロミドよりも高いADMET scoreを持つ化合物を優先して選別した。選別された840化合物について、グリオブラストーマ症例由来のがん性幹細胞培養株の中で最も増殖の早いGB-SCC010株を用いて検討した。抗細胞活性はWST-1アッセイ法により50%細胞増殖抑制濃度(IC50)を指標とした。対照薬剤は、テモゾロミドを用いた。その結果、IC50が10μM以下の化合物として11化合物が見出されたが、その抗細胞活性の強さはテモゾロミド以上であった。また、3種のがん性幹細胞(GB-SCC010、GB-SCC026、GB-SCC028)については、19種の幹細胞関連マーカーの発現についてReal time-PCR法により測定した結果、3株とも5種の幹細胞マーカー(CD133、MDR1、Olig2、Sox2、VEGFA)が増幅していることが認められた。さらに3種のがん性幹細胞培養株について、超免疫不全マウス(NOGマウス)への皮下移植における造腫瘍性を確認した。その結果、3株とも造腫瘍性が確認され、病理学的に外科的に切除された原発腫瘍と同一の所見が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
創薬研究のソースである化合物ライブラリーは貴重な資源でありスクリーニング作業にも多大なマンパワーを必要としているが、化合物ライブラリーの物性を評価しうるin silico ADMET予測プログラムにより、テモゾロミドよりも高いADMET scoreを持つ化合物を優先して選別してきた。約10万化合物ライブラリーの中から840化合物を選別したが、これらの化合物の内、11化合物がグリオブラストーマ症例由来のがん性幹細胞培養株GB-SCC010に対してテモゾロミドよりも強い抗細胞活性(10μM以下)を示すことを明らかにした。In vitro及びin vivo試験に使用する3株のグリオブラストーマ症例由来のがん性幹細胞培養株の特性を明らかにするため、19種の幹細胞マーカーについてReal-time PCR法により検討した結果、脳腫瘍幹細胞に特徴であるCD133を初めとする5種類の神経幹細胞マーカーの遺伝子が増幅していることを明らかにした。また、超免疫不全マウスへの皮下移植においてはin vivo造腫瘍性が確認され、in vivo評価試験に使用できることも明らかとなった。さらに、病理学的にも外科的に切除された原発腫瘍と同一の所見が確認されたことから、より臨床の病態に近い研究材料での化合物スクリーニングが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
グリオブラストーマ症例由来のがん性幹細胞培養株GB-SCC010に対照薬剤テモゾロミドよりも強い抗細胞活性を示した11化合物に特徴的な構造が見出されている。引き続き、スクリーニングを継続し、がん性幹細胞に対するIC50が1μM以下、親株よりも10倍以上強い抗細胞活性を示す化合物を指標として、最低3000個の化合物を選別してプレート化する。強力な活性を有する化合物が見出すことができれば、その化合物にフォーカスして類縁体の合成を行う。また、がん性幹細胞に対する抗細胞活性の評価としては、WST-1アッセイ法以外にもSphere formation assay法により、がん性幹細胞に特異的な化合物を選別する。なお、Star DropTMを活用したスクリーニングとin vitroの抗細胞活性の検討により得られたリード化合物が入手可能であればin vivo試験において、がん性幹細胞培養株GB-SCC010に対して経口投与での抗腫瘍効果や脳内移行性についても併せて検討するとともに、がん性幹細胞培養株の同所(脳内)移植法での評価系の構築を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては、Star DropTMを活用したスクリーニングとin vitroの抗細胞活性の検討において強力な活性を示す化合物を見出すことが出来れば、その化合物の類縁体の合成を行う。その為には、in silico ADMET予測プログラムのスクリーニングを継続して、がん性幹細胞に対して特異的に且つ強活性を示す化合物を選別するとともに、リード化合物にフォーカスした類縁体の合成を行う。また、がん性幹細胞に対する抗細胞活性の評価としては、WST-1アッセイ法以外にもSphere formation assay法により、がん性幹細胞に特異的な化合物を選別する。リード化合物が入手可能となった段階では、がん性幹細胞培養株GB-SCC010に対して経口投与での抗腫瘍効果や正常マウスにおける化合物の脳内移行性についても併せて検討するとともに、がん性幹細胞培養株の同所(脳内)移植法での評価系の構築を行う予定である。
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