研究課題/領域番号 |
24510003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 勲 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (00195455)
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研究分担者 |
磯田 豊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10193393)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 貧栄養化 / ホタテガイ養殖 / 陸奥湾 / 硝化 |
研究概要 |
本研究では、持続可能な生物生産活動の維持を脅かしかねない海域の貧栄養化のメカニズムを解明することを目的として陸奥湾において調査を行った。今年度は、合計4回にわたり14の観測点でCTD観測と表層から10m間隔で採水を行い、栄養塩、クロロフィルを測定した。2箇所の地点において基礎生産・窒素態栄養塩の同化速度の測定を行った。また、底層付近における栄養塩の再生過程を評価するために硝化速度を求めた。湾に注ぐ主要6河川について4月~9月にかけて月一回、流量、栄養塩、溶存、懸濁態有機物の測定を行った。湾口部における外海水との海水交換および栄養塩交換量をCTD観測及びXBT観測により見積った。8観測点より堆積物柱状試料を採取し、堆積速度および生元素の堆積フラックスを測定した。これらの観測結果より、1970年代以降、堆積速度および生元素の堆積フラックスが2倍程度増加し、その変化はホタテガイの養殖量の増加パターンと良く一致していた。このことは、ホタテガイは、湾内で生産された基礎生産物を効率良く、ろ過捕食し、その糞粒はすみやかに海底に沈積し、堆積物として埋没していることを示唆している。また、通常の内湾と異なり、陸奥湾の夏季においては、湾外の外洋水が、高温低塩分で軽いため、表層水として流入し、湾内から栄養塩に富む下層水が流出していること(逆エスチュアリ-循環)が明らかになった。つまり、陸奥湾においては、ホタテガイの養殖量の増加によって堆積物に埋没する量の増加と、外海水との特異的な海水交換の両者によって、湾内の栄養塩が年々減少傾向にあり、貧栄養化が起こっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3年間の研究期間の最初の2年間で対象海域のモニタリング調査を行う計画に対し、当初の目的通りに4回の海洋調査及び5回の河川調査を行った。調査項目についても、目的とした化学成分についてすべて測定を終了し、データ解析を現在行っているところである。堆積物の採取と堆積速度および生元素埋没量の調査を当初2点で行うとしていたが、今年度の調査において8地点について行い、より網羅的な結果が得られた。また、窒素態栄養塩の再生過程の解析において、当初予定していなかった分子生物学的手法を用いた解析法を導入した。以上の結果を総合すると、今年度については、当初の計画以上に研究は進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
1.現場観測:24年度と同様に、①海域の集中観測、②海水交換量、③河川調査、④海底境界層における有機物分解、栄養塩フラックス測定を引き続き行う。その際、24年度の結果を踏まえて観測点を厳選する。また、24年度に評価できなかった堆積物中のリンの動態について解明を行う。また、これまで研究交流を行っている地独青森県産業技術センター水産総合研究所の研究員と研究成果に関する意見交換を行い、研究計画および結果について客観的な評価を受け、以後の研究計画の修正等に反映させる。 2.ホタテガイ摂餌培養実験:ホタテガイが海水中の懸濁物質をどの程度ろ過捕食し、消化するのか、また糞粒にどの程度の有機物が含有されているのかを解明する。また、糞粒に含有されている有機物がどの程度の生分解性を有するのかを検証する。ホタテガイを実験室にて飼育し、餌料として培養した珪藻およびハプト藻を一定量添加し、添加餌料と残存餌料の差から摂餌量を算出する。また、排出された糞粒量とそれに含まれる生元素量を測定し、消化効率、糞粒中の生元素含量を算出する。また、糞粒を温度の異なる海水中に静置し、糞粒中の生元素濃度の経時変化を調べることにより、糞粒中生元素の分解速度を推定する。この値と既往の植物プランクトン分解速度等と比較することにより、ホタテガイに摂餌され糞粒に取り込まれた生元素が、他の経路を経て堆積物へと埋没する場合と比べてどの程度生物的な分解を逃れて堆積物に埋没されるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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