研究課題/領域番号 |
24510003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 勲 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (00195455)
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研究分担者 |
磯田 豊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10193393)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 貧栄養化現象 / ホタテガイ養殖 / 陸奥湾 / 栄養塩バランス / 逆エスチュアリー循環 |
研究実績の概要 |
本研究では、持続可能な生物生産活動の維持を脅かしかねない海域の貧栄養化現象のメカニズム解明を目的として青森県陸奥湾において調査を行った。最終年度である今年度は、貧栄養化をもたらした原因として考えられた、ホタテガイの糞粒の生分解性と堆積量の検討を行った。ホタテガイから排出される糞粒の堆積量は、ホタテガイ養殖場内に時間分画式のセジメントトラップを1年間設置することにより、8.62 g N m-2 y-1と見積もられた。糞粒の生分解性は、餌である植物プランクトンと比較すると半分以下であることが明らかとなった。ホタテガイは餌である植物プランクトンをほぼ100%の効率でろ過捕集し、消化吸収するが、未消化部分を糞粒として排出する。排出された糞粒は海底に堆積し、その約40%は微生物により分解を受けて、栄養塩として回帰するが、残りは分解されずに埋没する。一方で植物プランクトンの生分解性は高く、約7割以上が分解され栄養塩として再循環し、残り3割以下が埋没する。つまり、ホタテガイ養殖を導入したことにより湾内の栄養塩循環が変化し、栄養塩として再循環する割合が減少し、堆積物へと埋没する量が増えたことによって貧栄養化が引き起こされたと考えられる。また、モデル計算よりホタテガイ養殖を導入した直後の1980年代の基礎生産は、現在の約2倍高かったことが推定された。このことは、現在の状態が継続し、貧栄養化がさらに進行するとホタテガイの餌となる植物プランクトンの基礎生産が更に減少し、ホタテガイの成長不良あるいはホタテガイ養殖漁業の存亡にかかわる事態となる事が危惧され、一刻も早い対策を打つ必要があると思われる。
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