研究実績の概要 |
本研究は、冬期のサロマ湖とオホーツク海の氷上において取得した現場観測データと衛星観測データを比較し、マイクロ波センサや光学センサを用いた海氷密接度情報の高精度化と海氷厚推定アルゴリズムの開発を行った。 主に平成24年度と平成25年にサロマ湖氷上ならびにオホーツク海で実施した海氷の厚さ、塩分、温度、積雪深等の広域現場観測結果をもとに、一年氷と多年氷といいた異なる氷種ごとに厚さに敏感なパラメータを検討し、氷厚推定式をを開発した。この手法を衛星搭載マイクロ波放射計AMSR-E/AMSR2に応用し北半球全体の氷厚分布推定に発展させ、その成果を共著論文で報告し(Krishfield et al., 2014)、関連技術について特許を出願した(2014年12月)。本研究によって得られた北半球の海氷厚データは、国立極地研究所が運営している北極データアーカイブにおいて一般公開されている。本研究成果は合成開口レーダを用いたオホーツク海の海氷厚推定のアルゴリズムの開発(森ら、2014)にも寄与している。 また、本研究では新たな海氷の実験方法を検討し、限られた研究期間とコストで効率良く実験データを蓄積するため、簡易プールを用いた低温室や屋外で人工海水結氷実験を行う手法を開発した。平成25年度と平成26年度に北海道教育大学や北見工業大学の構内において実験を行い、海氷の塩分や海氷上の積雪深、融解度の変化をマイクロ波センサと光学センサで測定した。その結果、塩分の違いや融解に伴う海氷表面の誘電率とアルベトの変化を敏感に検出する各種アルゴリズムを開発し、それらの成果を国内外の雑誌に論文を発表した(Tanikawa et al., 2014; 田中ら、2015;特許出願、2015年3月)。今後は、本研究で開発した海氷厚推定手法を発展させ、衛星センサから海氷塩分や積雪深を推定する新手法の開発に繋げたい。
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