研究概要 |
A.汚染状況の異なる地域(高濃度汚染地域,低濃度汚染地域)に放牧された牛の体内組織中での放射性物質の挙動の研究 福島県畜産研究所から提供を受けた黒毛和種の検体(血液,筋肉を含む体内組織,尿など)と環境試料(ウシが摂取した牧草,土壌試料)を高精度のゲルマニウム検出器を用いて分析し(検出限界:3Bq/kg以下),飼料から体内組織への放射性物質の移行(注目元素:Cs-134, Cs-137,Te-129m,Ag-110m,K-40)および体内組織中での放射性物質の代謝について,コンパートメントモデルを用いて解析を行った. その結果,①飼料の汚染状況(低濃度汚染地域・高濃度汚染地域)に係わらず,ウシの血液と内臓組織に含まれる放射性セシウム濃度との間には,線形相関が存在すること.②放射性セシウムは筋肉に蓄積し易く,他の体内組織には蓄積しにくいこと.が明らかになった.これらの結果は,『飼料の汚染状況にかかわらず,飼料から消化管を介して血液中に取り込まれた放射性セシウムは,筋肉に蓄積した後,腎臓を介して尿としてゆっくりと体外に排出される』という代謝モデルを支持している. B.汚染飼料を摂取した牛の体内組織中の放射性セシウムの動的挙動の研究 汚染された飼料を摂取した牛の体内での放射性物質の動的挙動を調査する場合,モニタリング牛の負担を軽減し,体内組織中の放射線量を非侵襲に計測するシステムが必要になってくる.携帯型NaIスペクトルメーター用いて,『牛の筋肉中の放射線量を体表部分から計測するための簡易型のシステム』を作製し,放射性セシウム入りファントムおよび汚染飼料を摂取したウシ用いて,体表で計測された放射線量と体内組織中に含まれる放射性セシウム量との間の相関を検討した.その結果,体表で計測された放射線量から,体内の放射性セシウム量を推計することが確認できた.
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