A.汚染状況の異なる地域に放牧された牛の体内組織中での放射性物質の挙動の研究, 放射性セシウム(Cs)の降下量の異なる(Cs137の降下量:0.05~5 MBq/m2)地域で採取された黒毛和種の検体(血液および筋肉を含む体内組織:福島県畜産研究所から提供を受けた)を用いて,ウシの体内組織中での放射性Csの分布を高精度のゲルマニウム検出器(検出限界;3 Bq/kg)を用いて測定し,定常状態では,血液中と体内組織中に含まれる放射性Csの濃度に線形相関があることが明らかになった.この結果をコンパートメントモデルを用いて解析し,「飼料を摂取することで体内に取り込まれた放射性Csは,血液を介して筋肉などの体内組織の取り込まれる(筋肉に蓄積し易い).筋肉に蓄積した放射性Csは,血液→腎臓→尿という経路を介して体外に放出される」という体内動態モデルを提案した.また,筋肉中での放射性セシウムの局所分布を観察さるために電顕オートラジオグラフィーの手法が適用可能かについての検討を行った(平成26年度) B.高濃度汚染飼料を摂取した牛の体内組織中の放射性セシウムの動的挙動 平成24年度に作製した「牛の筋肉中の放射線量を体表部分から測定するための簡易計測システム」を用いて,汚染飼料摂取した牛の筋肉中の放射線量の減少を推定した(平成26年度).また,汚染飼料を給与した後クリーンな飼料を与えた牛の尿中の放射性Cs濃度の動的変化を観測し,コンパートメントモデル(非定常状態)による解析を行い,筋肉に蓄積した放射性Csが放出されることに依存した減衰過程(生物的半減期:15日程度)のほかに,半減期が1~2日程度の蓄積過程を伴わない減衰過程あることを明らかにした.この結果は,Aで述べ放射性Csの体内動態モデル(筋肉が放射性CsのReservoirになっている)を支持している.
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