研究課題/領域番号 |
24510007
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高村 民雄 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (40272356)
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キーワード | エアロゾル / SKYNET / 光学的厚さ / 単一散乱アルベド / 放射収支 |
研究概要 |
前年度の解析結果から,SKYNETのエアロゾルの光学的厚さ(AOT)は精度良く求められていることが判明しており,これはAERONETとの並行観測や分光全天・散乱日射フラックスを用いた異なる器材を用いた結果から明らかとなっている.本課題の再解析では,単一散乱アルベド(SSA)の精度評価が中心となっており,前年度に引き続き異なる器材間での比較検討,解析手法等の検討を実施してきた.波長別日射フラックスによる推定結果との比較では,sky radiometerによるものはSSAの過大評価傾向が既に得られており,原因を観測器材の特性,解析手法等を考慮して検討してきた. 観測機材に起因する推定誤差について,sky radiometerでは散乱光強度の絶対量計測に関わる精度が検討されており,なかでも視野角の高精度推定手法の検討がなされた.従来手法(太陽光源による立体視野角計測)の比較検討として,積分球使用とLangley手法を組み合わせたもので行われ,概ね双方の結果は一致するが,得られた立体視野角にやや波長依存性が強く出るなどの新たな課題も生まれている.一方,分光全天/散乱日射フラックスから求める手法では,従来のセンサーのコサイン特性の影響除去の他に,エアロゾルの高濃度時(AOT>0.5~0.6)に,推定AOTに僅かにずれが見られ,この手法から求められるAOTがやや過小評価されることが新たに判明した.AOTの過小評価は,散乱光フラックスを利用したSSA推定では,吸収能を過大に評価することになり,この点での一層の精度評価が必要となり,これに対する補正法を開発することが急務となった. 一方,エアロゾルモデルを用いたSSAの解析結果の検討では,少量のEC(黒色炭素粒子)でも粗大粒子の存在により吸収能がかなり異なることが指摘され,粒径分布の重要性が再確認された(発表文献参照).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は,SKYNETで計測しているエアロゾルの光学パラメータについて,その精度向上のための再解析を行うことである.再解析では,既に運用されているV4.2解析アルゴリズムに対して,coarse mode(粗大粒子)側の粒子の取り扱いが異なる新しいアルゴリズムや粒子の非球形効果をいれたものを検証し実施している(V4.5, V5).現在,再解析は試験解析を終了し,本格的な過去のデータについて再解析を実施中である. 並行して,エアロゾル光学パラメータの内,光吸収を担うSSAについて,必ずしも決定的なアルゴリズムが出ていないことから,他のSSA推定器材を導入して評価を行ってきた.その主力は遮蔽バンド付き全天分光日射計による評価であり,これまで観測及び解析が行われてきた.その結果,幾つかの新たの課題(例えば,前述のエアロゾル高濃度時のAOTの過小評価や前方散乱補正の不十分さなど)も明らかとなった.これらを解決することで,高精度のAOT, SSAが推定可能となり,本来のSKYNET再解析結果の精度評価に繋げる予定である. また,sky radiometer本体のハードウェアに由来する誤差要因についても検討を行っており,SSA推定精度に影響を与える散乱光計測の誤差評価も実施中である.
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今後の研究の推進方策 |
SKYNETデータの再解析の推進に際し,SSAの信頼度・精度向上を中心として進めている.このため,複数器材による比較検討を25年度に続き継続する予定である.とりわけ遮蔽バンド付き分光全天日射計による比較検討を実施し,センサーコサイン特性不良への対処,前方散乱補正の改善等に対する新しいアルゴリズムの開発を推進する.一方,sky radiometerの計測手法に関する比較検討,特に散乱光計測に対する立体視野角の信頼度評価を引き続き行い,SSA推定精度の向上を図る予定である.これらを通して,SKYNETデータ全体のSSA推定に対する精度向上を図る予定である. Sky radiometerのアルゴリズム改善(V4.2 ――> V4.5, V5)に対応する解析が25年度には,SKYNETの幾つかの限定サイトで実施されており,引き続きV4.2の結果と比較しながら全サイトの過去のデータへと拡げる予定である.再解析結果は,可能なサイトでは全天・直達・散乱日射量等との比較を行い,精度評価を行う. 精度評価に対応して,SKYNETサイトの維持管理を必要に応じて行う予定であるが、器材の老朽化も進んでいることから,適切な提言をまとめる時期に至っている。このため、再解析と並行してこうした対策を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
エアロゾルパラメータ推定に関する精度検証・確認のためのSKYNETサイトへの出張が,器材の都合で延期となり,次年度に実施することとしたため. エアロゾルパラメータ推定に関する精度検証・確認を行うためにSKYNETサイトへの出張旅費として使用する.
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