研究課題/領域番号 |
24510008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 秀樹 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (30451892)
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研究分担者 |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 環境変動 / 生態学 / 海洋保全 |
研究概要 |
本年度は計画に従い、前半部で沈降速度別分取装置の製作を行い、後半より大槌湾のアマモ場での観測を実施した。 Peterson et al. (2005)(Limnology and Oceanography Methods 3: 520-532)を参考に分取装置一基を作製、試験を行った。大槌湾の観測については、東日本大震災によりアマモ場が基部となる砂州ごと消失した釜石市根浜地区のみにて行うことを計画していたが、本課題採択後、同市の室浜地区には震災の影響をほとんど受けていないアマモ場が発見されたとの情報があり、5月、7月、9月にこの室浜地区と当初の計画にある根浜地区の両地区にて予備調査を行った。しかしながら水中ビデオなどを用いた観測より、この室浜のアマモ場の規模が非常に小さかったこと、また東北マリンサイエンス拠点形成事業により釜石市の箱崎地区のアマモ場に係留型連続測定リン酸計が設置され、このモニタリングデータをバックグラウンドデータとして利用できる利点があることから、この箱崎地区と当初の計画にあった根浜地区を最終的な研究対象として設定した。 11月に水中ビデオを用いた予備調査を両地区で行った。箱崎地区では密度は高くないものの、葉長が50 cm以上の個体が多数観察されたが、根浜地区では葉長が50 cm未満の小型の個体を少数発見したにとどまった。これらの分布状況と震災前の観測でのアマモ場は水深7 m以浅という知見から、それぞれ地区ののアマモ場内部に3つの観測点、対照地点として水深9 mの線上にこの3つの観測点とほぼ平行となる3つの地点を設定し、11月、1月、3月には栄養塩類、溶存有機炭素・窒素、懸濁態有機炭素・窒素およびその安定同位体比測定用のサンプルを採取した。また微生物群集の代謝活性の指標として、アルカリフォスファーターゼなどの細胞外酵素活性の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
懸濁物分取装置は計画通り整備することができた。観測対象となるアマモ場については当初の計画にある地区に加えて、室浜地区、箱崎地区を検討することとなったが、早い時期から予備調査を行うことができたため、当初の計画通り冬季である11月には観測を開始することが出来た。箱崎地区ではマリンサイエンス拠点形成事業により配信されるリン酸塩の連続観測データを利用できる見通しであるため、栄養塩類の再生の場としてのアマモ場の機能について、計画以上の成果が得られるものと期待してできる。 しかしながら使用する予定だった東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター所有のセジメントトラップの整備が平成25年度初頭にまで遅れる見通しとなったため、本年度冬季の沈降粒子束の測定が行えず、懸濁態有機物の分布状況で代用することとなった点が当初の計画より遅れていることから、評価の区分を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の予備調査などにより、観測対象地域の追加を行ったが、観測作業と採取した試料の分析を予定通り行っていく。使用予定している大気海洋研究所のIR-MSが当初の予定通り、平成24年度内に納品され、その整備も終わっていることから、本装置を用いた分析作業は計画通り行うことが出来ると考えている。 海況が安定していると思われる年度の前半に箱崎・根浜の両地区の水塊の動きの検討するためのGPS波浪ブイを用いた観測を実施し、対象地区の流動場の解析を行うとともに試料の分析結果と合わせて観測地点の妥当性の確認を行う。 平成25年度前期には平成24年度の分析結果をまとめ、9月に行われる日本海洋学会の秋季大会で成果を報告し、年度末に米国で行われるASLO Ocean Science Meetingにて成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
懸濁態有機炭素・窒素ほか化学分析用の消耗品、現場型粒子計の電池の購入のほか必要な物品を購入する。GPS波浪ブイのサービス会社との使用契約を結び、運用する。大槌湾での観測並びに国内外での学会での成果発表を行う。また技術補佐員を雇用し、分析試料の前処理などを依頼する。
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