最終年度にあたり、これまでの研究のとりまとめを行った。 炭酸系パラメーターについては、表層の二酸化炭素分圧は、秋季を除いて大気の二酸化炭素分圧より低いことはこれまでの申請者らの研究で明らかとなっていたが、底層の二酸化炭素分圧は春季から夏季にかけて高くなり秋季から冬季にかけて低くなっていたことも確認できた。表層では活発な生物活動により二酸化炭素が消費され有機物が生成していると考えられた。さらに、生成した有機物が沈降・分解されることにより底層での二酸化炭素分圧が高くなっていたと考えられた。 15-N標識による改良IPT(Isotope Pairing Technique)法を用いての脱窒とアナモックス活性定量については、堆積物コアの総脱窒速度は1平方メートル1時間あたり平均9.2μmol Nであった。そのうち堆積物直上水由来の硝酸塩による脱窒速度は平均3.8μmol Nであり、堆積物表層の硝化によって生成された硝酸塩由来の脱窒速度は平均5.4μmol Nであった。総脱窒速度および硝化によって生成された硝酸塩由来の脱窒速度は冬季に比べ夏季の方が高かったが、直上水由来の硝酸塩による脱窒速度は夏季に比べ冬季に高かった。また、窒素生成におけるアナモックスの寄与は非常に小さかった。 アルカリフォスファターゼ活性のモニタリングから、夏季にリン酸塩制限状態となっていることが示されたたが、今後の東京湾における更なる栄養塩流入量低下により春先から夏にかけてリン酸塩制限が起こる可能性がある。それに伴い一次生産速度の低下・CO2収支の変化が起こる可能性が考えられる。そのため、本研究で試行した様々な測定項目のうち、特にアルカリフォスファターゼ活性、一次生産速度、炭酸系パラメータを長期モニタリングに取り込み高度化した観測を行っていく必要がある。
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