研究課題
放射性核種はその地球化学的特性や半減期の違いを利用し、海洋環境における水塊流動特性や物質動態の評価に有効である。ラジウム同位体は海水とともに移動する一方、粒子吸着性であるトリウム同位体は粒子除去により、その一部は海水表層より除去される。特に228Th (半減期1.91 年) は228Raの娘核種であり、親核種の溶存228Raと存在度を比較 することにより(すなわち228Th/228Ra放射能比) 、粒子吸着性元素 (成分) さらには粒子の挙動を探るうえで重要な知見をもたらす。東シナ海西部の大陸棚浅層海水は栄養塩や陸域や生物生産から生まれた粒子を多く含んでいるために、粒子除去は本海域の物質循環を特徴づけるうえで、重要なプロセスである。さらに、東シナ海表層海水は、対馬海峡を通過し、日本海における対馬暖流の起源となる。本年度は、特に大陸棚浅層海水の日本海への流入にともなう物質循環の解明を目的に、表層海水の228Th/228Ra比の分布を調べた。その結果、東シナ海表層において、228Th/228Ra比に大きな変動 (0.01-0.7) が明らかになった。一方で、日本海表層では、228Th/228Ra比は小さな変動を示した (<0.3)。今後、東シナ海および日本海表層における水塊に関する情報 (例えば228Raに富む大陸棚浅層海水の割合) を228Ra/226Ra比から得たうえで、本研究海域の粒子吸着性成分の粒子除去に関して、季節変動を含めたより詳細な228Th/228Ra比の分布より議論する。最終的には、日本海の対馬暖流における物質動態 (特に粒子の挙動) を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件)
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