研究課題/領域番号 |
24510012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
國頭 恭 信州大学, 理学部, 准教授 (90304659)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リン / ホスファターゼ / 黒ボク土 / 土壌微生物 / リン制限 / 可給態リン / 畑土壌 |
研究概要 |
リンを施肥していない処理を含め、様々な施肥管理をしている長期連用圃場14区から、畑土壌(黒ボク土)を計42点採取した。可給態リン酸量はTruog法、Bray第二法(準法)、Hedley法により測定した。リンを施用していない区では、可給態リン酸量は極めて低い値を示した。抽出されたリン酸量はBray第二法(準法)>Truog法>Hedley法のH2O-Pi+NaHCO3-Piの順であった。Truog-P、Bray 2-P、H2O-Pi+NaHCO3-Piは互いに有意な正の相関を示し、またリン施肥量とも強い正の相関を示した。Hedley法によりリン形態を分析をしたところ、いずれの区でもNaOH-Pi+Poが卓越していた。またこの画分のリン含量は、リン施肥量と有意な正の相関を示した。このため今回用いた黒ボク土では、施肥リンの多くが活性Al・Feに吸着していることが示唆され、既存の知見と一致した。またNaHCO3抽出液に各種ホスファターゼを添加しリンの利用性を調査したところ、ほぼ全てが分解され、生物利用性が高いことが判明した。 微生物群集におけるリン要求性を評価するため、β-D-グルコシダーゼ活性に対するホスファターゼ活性の比を測定した。この比はリンを施用していない区で高く、Truog-P、Bray 2-P、H2O-Pi+NaHCO3-Piのいずれとも有意な負の相関を示した。このため、リンが少ない土壌では、微生物がリンを獲得するため、ホスファターゼの合成に優先的に資源を配分している可能性が示された。しかしながら、リン添加により微生物活性が有意に増加した区は1つのみであり、それ以外の区では微生物群集はリン制限の状態ではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、畑地での可給態リン濃度の測定と、リン獲得系酵素と炭素獲得系酵素生産への資源配分による土壌微生物のリン要求性評価が実施できた。またリン添加実験により、土壌微生物群集のリン制限の有無についても調査できた。
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今後の研究の推進方策 |
森林土壌においても畑地と同様に、可給態リン濃度の測定と、酵素活性や土壌呼吸を用いたリン制限の検討、微生物バイオマスの測定を実施する。また畑土壌と森林土壌中の微生物群集構造とホスファターゼ遺伝子の多様性を、PCR-DGGE法を用いて解析する。全ての結果を総合することにより、可給態リンが乏しい森林土壌における微生物群集のリン制限・リン要求性を包括的に理解し、今後の窒素沈着による「人為的リン制限」への漸進的移行様態や、「人為的リン制限」への近接度を推定する方法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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