研究課題/領域番号 |
24510012
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
國頭 恭 信州大学, 理学部, 准教授 (90304659)
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キーワード | リン / ホスファターゼ / 土壌微生物 / リン制限 / 可給態リン |
研究概要 |
リンを施肥していない処理を含め、様々な施肥管理をしている長期連用圃場14区から採取した黒ぼく土を用い、16S rDNAおよび18S rDNAを標的とした細菌および糸状菌の群集構造解析を行った。また、細菌由来のアルカリホスファターゼ遺伝子を標的としたPCR-DGGE解析の実験条件を検討した。ゲル中に含まれる変性剤の濃度勾配や温度を変化させ、最適な実験条件を確立したのち、上記の黒ぼく土14点での解析に適用した。この結果、施肥管理により、細菌群集構造と糸状菌群集構造は変化し、とくに細菌群集で顕著であることが分かった。またアルカリホスファターゼ生産細菌は、リン施肥の多少によって群集構造が異なり、特に、ホスファターゼの生産に多くの資源を配分していると推定された土壌では顕著に異なることが示唆された。このため、リンが欠乏している土壌では、特異的なホスファターゼ生産細菌が優占する可能性が考えられる。 また長野県下の森林から土壌試料30点を採取した。微生物群集のリン要求性を評価するため、β-D-グルコシダーゼ活性に対する酸性ホスファターゼ活性の比を測定した。数点の土壌ではこの比が10近くの値を示し、可給態リン濃度が極めて低い畑土壌と同等であった。このため、これらの森林土壌ではリンの利用性が低く、微生物がリンを獲得するために、ホスファターゼの生産に優先的に資源を配分している可能性が示された。現在、可給態リン濃度を測定するための抽出実験が終了した段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、細菌由来のアルカリホスファターゼ遺伝子を標的としたPCR-DGGE解析法の実験条件を最適化でき、さらにそれを畑土壌に適用できた。また森林土壌を採取し、リン獲得系酵素と炭素獲得系酵素生産への資源配分による微生物群集のリン要求性を評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
森林土壌での可給態リンの測定や、微生物バイオマス炭素・窒素・リンの比を算出する。得られた結果を土壌酵素活性の結果と比較し、微生物群集における養分獲得のための資源配分の詳細を理解する。また畑土壌と森林土壌の結果を総合することで、土壌微生物群集におけるリン制限への近接度を推定する方法を提案する。
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