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2014 年度 実施状況報告書

気候変動に伴った東シベリアの植生・凍土システム変化を予測するシミュレーターの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24510014
研究機関独立行政法人海洋研究開発機構

研究代表者

佐藤 永  独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 研究員 (50392965)

研究分担者 小林 秀樹  独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (10392961)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード東シベリア / カラマツ林 / 永久凍土 / 生態系シミュレーション / 動的全球植生モデル
研究実績の概要

1. 陸面統合モデルによる実験
昨年度までに、陸面統合モデル(動的全球植生モデルSEIB-DGVMと陸面物理モデルNOAH-LSMの結合モデル)を用いて、東シベリアのカラマツ林における、気温上昇への感度分析を実施した。その結果、今世紀末にかけて予測される気温上昇幅は、地表面の永久凍土層を融解させ土壌水の流出を促すことで、この地域の植物生産性を低下させることが示された。
今年度は、IPCC第5次報告書に日本チームが提出した気候変動予測(MIROC-ESM出力)を用いて、気候変動がこの地域のカラマツ林の消長に及ぼす現実的な影響を調べた。MIROC-ESM出力では、我々が研究対象としているヤクーツク市近郊において、2005年から2100年までに、年平均気温が、RCP2.6シナリオの場合4.7℃、RCP8.5シナリオの場合10.4℃上昇するとが予測されている。同時に年降水量は、RCP2.6とRCP8.5シナリオにおいて、それぞれ22%と66%の上昇を予測しており、これは気温上昇に伴う乾燥化を緩和する。さらに大気中CO2濃度は、RCP2.6とRCP8.5シナリオは、それぞれ565ppmと50ppmの上昇を見込んでおり、これは植物の水利用効率を高め、乾燥の影響を緩和する効果を持つ。
この気候変動予測を用いてシミュレーションを行ったところ、RCP2.6とRCP8.5のいずれのシナリオの元においても、ヤクーツク市近郊のカラマツ林では、土壌が湿潤化し、そのため植物生産性は高まると予測された。また、シミュレーションを行う範囲を東シベリア域全体に拡張した場合でも、ほぼ全ての地域においてカラマツ林の生産性は高まり、さらにカラマツ林帯はより高緯度に達すると予測された。
2. 広域シミュレーション検証用のデータセット整備
昨年度に引き続きSPOT-VEGETATIONデータの長期データセットの整備を行った。平成26年度は、2013年のSPOT-VEGETATION 10日間コンポジット反射率データを入手し、春先の展葉日と秋の落葉日及び葉面積指数の1kmスケールの推定を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

温暖化に関する感度実験の投稿論文が却下されたため、現在は新しい成果を含めた論文原稿を準備している。このため、論文の出版については当初計画より遅れている。
しかしながら、当初計画では最終年度に実施する予定であった東シベリア全域のシミュレーションを、当該年度中に行うことができた。また、当初計画には挙げていなかった、陸面過程モデルの発達に関してのレビュー論文を出版することもできた。以上の理由より、現在までの達成度は「計画通り」と自己評価した。

今後の研究の推進方策

1. 陸面統合モデルによる実験
当初の研究計画では、カラマツに比べてより乾燥に強い樹種(アカマツなど)をシミュレーターに導入することを計画していた。しかし、実際の気候変動予測の元でのシミュレーションからは、むしろ東シベリア全域が湿潤化するいう結果が得られたために、現在のカラマツ林がより乾燥に強い樹種に入れ替わるという可能性は、今世紀末までに予測されている気候変動シナリオにおけるシミュレーションにおいては、ほぼ無視できることが示された。
その一方で、過剰な土壌湿潤化は、カラマツに加湿枯死をもたらす事がわかってきた。実際に、我々が研究対象としているヤクーツク市近郊において、2007~2008年にかけて生じた土壌過湿によって、その後の数年間にわたってカラマツ林に枯死帯を生じさせたという報告が行われている。しかし、現在のシミュレーターにおいては、過湿枯死は扱っておらず、土壌が湿潤であるほど光合成時の水制限が緩和されるというポジティブな反応しか起きない事を仮定している。
そこで最終年度の研究方策としては、このような過湿枯死が、今世紀末にかけて東シベリアカラマツ林帯に及ぼしうる影響についても、検討する。
2. 広域シミュレーション検証用のデータセット整備
当初計画通りに進捗した。これらは、「現在までの達成度」で述べた広域シミュレーションの検証に用いられる。

次年度使用額が生じた理由

投稿論文が却下となったために、その投稿費用(およびオープンアクセス費用)として確保しておいた金額に未使用が生じた。

次年度使用額の使用計画

論文投稿費用に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Current Status and Future of Land Surface Models2015

    • 著者名/発表者名
      Sato H, Ito A, Ito A, Ise T, Kato E
    • 雑誌名

      Soil Science and Plant Nutrition

      巻: 61 ページ: 34-47

    • DOI

      10.1080/00380768.2014.917593

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Continental-scale impacts of intra-seasonal rainfall variability on simulated ecosystem responses in Africa2014

    • 著者名/発表者名
      Guan K, Good SP, Caylor KK, Sato H, Wood EF, Li H
    • 雑誌名

      Biogeosciences

      巻: 11 ページ: 6939-6954

    • DOI

      10.5194/bg-11-6939-2014

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 気候変動が東シベリア・カラマツ林帯に及ぼす変化の予測2015

    • 著者名/発表者名
      佐藤永, 岩花剛, 太田岳史
    • 学会等名
      第62回日本生態学会大会
    • 発表場所
      鹿児島県鹿児島市(鹿児島大学)
    • 年月日
      2015-03-22
  • [学会発表] 衛星データを用いたグローバル葉面積指数・光合成有効放射吸収率推定アルゴリズムの開発2015

    • 著者名/発表者名
      小林秀樹, 小野祐作, Yang Wei, 村上浩, 奈佐原顕郎, 梶原康司, 本多嘉明
    • 学会等名
      第23回 生研フォーラム「宇宙からの地球環境・災害のモニタリンクとリスク評価」
    • 発表場所
      東京都目黒区(東京大学)
    • 年月日
      2015-03-02
  • [学会発表] Estimation of tundra and forest understory vegetation phenology in Alaska from time-lapse cameras and satellite measurements2014

    • 著者名/発表者名
      小林秀樹, Yunus Ali Pulpadan, Shin Nagai, Donie Bret-Harte, Brie Van Dam, Yoshinobu Harazono, Kazuhito Ichii, Hiroki Ikawa, Hirohiko Nagano, Walter C. Oechel, Prabir Patra, Konosuke Sugiura, Masahito Ueyama, Donatella Zona, Rikie Suzuki
    • 学会等名
      第5回極域科学シンポジウム
    • 発表場所
      東京都立川市(国立極地研究所)
    • 年月日
      2014-12-04
  • [学会発表] Memory Effects for Existence of Surface Permafrost in Eastern Siberia under Warming Trend2014

    • 著者名/発表者名
      Hisashi SATO, Go IWAHANA, Takeshi OHTA
    • 学会等名
      IVth International Conference "The role of permafrost ecosystems in a changing climate"
    • 発表場所
      ヤクーツク市, ロシア
    • 年月日
      2014-08-05

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公開日: 2016-05-27  

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