研究課題/領域番号 |
24510019
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
宮崎 あかね 日本女子大学, 理学部, 准教授 (80293067)
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キーワード | フェリハイドライト / モリブデン酸イオン / 吸着 / 脱着 |
研究概要 |
昨年度は、アルミニウムイオンと亜鉛イオンの共沈実験を行い、得られた共沈物を収着生成物のモデルとしてAlの化学構造の解析を行った。2年目である平成25年度、当初の予定では、亜鉛イオンの代わりにカドミウムイオンを用いた収着実験を行うことを予定していた。しかしながら、大学から1年間の海外研修のチャンスを与えていただき、アメリカ、ペンシルベニア州立大学の地球科学科、大本洋教授と共同研究を行うことになったため、研究の対象をカドミウムとアルミニウムではなく、鉄質酸化・水酸化物に対するモリブデン酸イオンの吸着に変更した。この系は地球科学的に非常に興味深い系でり、かつ酸化物表面と重金属イオンの間の固・液界面反応を扱う点において同じであることが変更の主な理由である。 鉄質酸化・水酸化物に対するモリブデン酸イオンの吸着においては酸化還元反応が起こることが予想される。そのため、実験は溶液中の鉄、モリブデンの濃度を測定するとともに、pH、酸化還元電位、溶存酸素濃度を同時にモニターしながらグローブボックス内で行った。詳細な検討の結果、海水と同じpH=8付近でのモリブデン酸のフェリハイドライト表面への吸着が外圏錯体形成で説明できることが明らかになった。さらに、一度吸着したモリブデン酸イオンが時間とともに脱着するという現象も明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定と異なる金属酸化物と重金属イオンの組み合わせを吸着反応の対象とした1年間であったが、フェリハイドライトとモリブデン酸イオンの系においても、吸着に次いで脱着が起こっているという事実を新たに確認することができた。この結果は、吸着が脱着を経て収着へと移行する、アルミナに対する亜鉛イオンの吸着の系と同様の現象が鉄質酸化・水酸化物の系においても起こっていることを明らかにしており、本課題で扱う「吸着から収着へ」という変化が、地球科学的に非常に重要な意味を持っていることを明らかにすることができたと言える。こうした点から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究の最終年度に当たる。そのため、これまで扱ってきたアルミニウムの酸化物に対するカドミウムイオンの吸着反応と、昨年度に新たな研究対象として取り上げたフェリハイドライトに対するモリブデン酸イオンの吸着反応について並行して扱う。まず、アルミニウムとカドミウムの系については、共沈生成物の解析を手始めとして、吸着生成物の解析を行いたい。すでにAlおよびCdでNMRによる化学状態の解析ができることがわかっているので、サンプルの作成とスペクトル解析に集中する。一方、フェリハイドライトに対するモリブデン酸イオンの吸着の系については、脱着のメカニズム解明に挑む予定である。これまでの実験で、脱着の過程で系のpHが上昇していることがわかっている。現在のところ、この原因として、フェリハイドライトからゲータイトへの相変化が起こっていることを考えているが、この点についてより踏みこんだ解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外研修に伴い、研究対象を変更したため、研究計画に変更があった。特に、予定していた海外出張を取りやめたため。 平成26年度は研究打ち合わせのために、ペンシルベニア州立大学の大本洋教授を訪問する予定にしている。昨年度使用しなかった分の海外旅費を、今年度に使用したい。
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