本年はΔ14C測定の前処理としてのグラファイト化の7サンプル自動システムの構築を行った。昨年度に組み上げた各パーツ(精製ライン、トラップライン、DIC抽出ライン)を連結し、コールドトラップを上下させる電動アクチュエーターと電磁弁の作動タイミングを同期させた。精製した炭酸ガスの水素還元を行う電気炉の温度調節とできたグラファイトの粉末をカプセル化するシステムを整備した。グラファイト化された炭酸ガス量を見積もるためトラップラインに設けられた真空圧の常時モニタリングシステム(ゲージコントローラTPG261/Active Line PT882550-T)の動作チェックも行った。この結果、研究期間全体を通じては以下の3種類のラインを作成し、うち2種類のラインを使って実サンプルの測定を行った。 1)溶存無機炭素の炭素安定同位体比(δ13C)の測定ライン 2)メタンガスのδ13Cの測定ライン 3)溶存無機炭素の放射性炭素濃度(Δ14C)の測定ライン 実サンプルとして用いた霞ヶ浦の底泥間隙水の測定結果から、霞ヶ浦底泥中のメタンガスのδ13Cはおよそ-70‰であり、CO2 + H2 → CH4が、霞ヶ浦の底泥中のメタンガスの主たる生成プロセスであるという知見を得た。上記生成プロセスは大きな同位体分別を伴う反応であり、基質である溶存無機炭素のδ13Cが高い時ほどメタン生成活性が高くなるということが分かった。以上の結果から、底泥中の溶存無機炭素の安定同位体比は流域の中で最も高い値を取り、温室効果ガスであるメタンガスの生成活性を反映していることが明らかとなった。
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