研究概要 |
森林土壌における二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素ガスの吸排出は、全球規模の温室効果ガス循環に大きく寄与している。今年度は、日本の森林での観測データに基づいてベイジアンキャリブレーションを利用して構築されたデータ指向型モデルであるSGRモデル(Hashimoto et al., 2011, Ecological Modelling; Hashimoto et al., 2011, Scientific Reports)を全球に0.5°グリッドで適用し、土壌からの二酸化炭素放出量・メタン吸収量・一酸化二窒素放出量を全球推定した。気候データには、CRU3.1を用い、植生データにはEOS-WEBSTERを使用した。土壌のデータにはISRIC-WISEを利用した。今回のシミュレーションでは、それぞれ78 Pg C yr-1、18 Tg C yr-1、4.4 Tg N yr-1となった。またすべてのガスにおいて、熱帯域の寄与が大きく、特に二酸化炭素と一酸化二窒素ガスにおいて寄与率が大きかった。また二酸化炭素と一酸化二窒素では明瞭な季節変化が見られた。データ指向型モデルを用いた独自の全球推定値に加え、既存の報告例も集め、全球の推定値を整理した結果、二酸化炭素放出は79 Pg C yr-1 (変動係数 CV = 13 %, データ数 N = 6)、メタン吸収は 21 Tg C yr-1 (CV = 24 %, N = 24)、一酸化二窒素放出は7.8 Tg N yr-1 (CV = 38%, N = 11)であることが明らかになった。ただし、一酸化二窒素に関しては、明らかに大きな値を示した初期の推定値を除いた場合、6.6 Tg N yr-1 (CV = 22%, N = 9)であった。
|