2012年から2013年のつくば市で観測したライダーとスカイラジオメータのデータからエアロゾル光学特性の鉛直分布を推定し、季節変動を導出した。大気境界層内の光学的厚さは、季節的な変動が小さく、概ね0.1程度であった。自由大気中では、春の光学的厚さが0.12で、境界層内と同程度以上の大きな値が平均値として得られた。高度毎のエアロゾルの特徴をまとめると、光吸収性が大気境界層で最も強く、また、エアロゾルの濃度が大きい時ほど弱くなる傾向が見られた。粒子サイズは、自由大気上部で粗大粒子が卓越し、下部では微小粒子が卓越していた。大気境界層内では、濃度が大きい時ほど微小粒子が卓越する傾向があった。 次に、自由大気中に高濃度のエアロゾルが流入した6事例を抽出し、後方流跡線解析を組み合わせて特徴を調べた。西から流入した4事例では、黄砂と考えられる粗大粒子が卓越していた。北から流入した2事例では、ロシアの森林火災が起源と推測され、微小粒子が卓越するという特徴が見出された。 これらの季節毎、高濃度事例毎の光学特性を一次元大気モデルに入力し、大気境界層への感度実験を行った。いずれの場合も、エアロゾルによって、顕熱フラックスの減少、境界層高度の低下、境界層内の気温の低下がもたらされていた。さらに、光学的厚さを変えずに、全てのエアロゾルを大気境界層内に圧縮した実験を行った所、エアロゾルによる気温や境界層高度の低下幅が小さくなった。このことから、春や冬の自由大気中のエアロゾルは、自由大気中に存在すること自体が、大気境界層へ与える影響を大きくしていることが分かった。
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