研究課題/領域番号 |
24510028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
兼保 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (00356809)
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研究分担者 |
野口 泉 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部境科学研究センター, 研究主幹 (10442617)
秋山 雅行 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部環境科学研究センター, 研究主幹 (30442619)
松本 潔 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60373049)
山口 高志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部境科学研究センター, 研究主任 (90462316)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 元素状炭素 / 沈着フラックス / 経年変化 / 季節変化 / 雪氷面アルベド |
研究概要 |
地方自治体での酸性雨測定の際に前処理に使用されている濾過メンブラン・フィルターに保持された元素状炭素を測定する手法を決定し、バックグラウンド地点(北海道利尻島)および都市域(札幌市)における過去のバルク(湿性+乾性)沈着量レコードを復元する試みを開始した。 メンブランフィルターの有機溶媒への溶解条件、塩酸による炭酸塩の除去条件の検討、石英繊維フィルターへの再濾過の際の粒子透過補正などを検討し、現時点での最適な条件を決定した。また、メンブラン・フィルターが有機溶媒に溶解した後も、石英繊維フィルターに対する濾過作業時に再度析出することでブランク値を上げる可能性がある。そこで、メンブラン・フィルターのブランク炭素量を測定したところ、total carbonとしては1枚当たり4.9 μgCが分析されたが、TOT(透過光補正)熱分析により元素状炭素(EC)の解析値はゼロとなった。また、北海道札幌および利尻島でのバルク沈着サンプルは1ヶ月積算の形で各フィルターが保存されており、多くの場合、そのままでは炭素系粒子濃度が濃すぎるため、春・冬・晩秋ついてはフィルターの1/2枚または1/4枚を使用し、濃度が低下する夏については1枚全量を使用するといった調整を行う必要があることがわかった。 初期的な分析として、国内でのディーゼル排気ガス規制の結果をみるため約10年の間隔を経た期間のサンプルの元素状炭素を先行して定量した。2000年、2001年、および2011年の両地点でのTOT-EC総沈着フラックス測定結果は、両地点とも2000年代初頭と比べて2011年で沈着量が減少しているが、札幌と利尻島ではその要因が異なると考えられる。札幌では2000年代のディーゼル排気ガス規制の効果が見えていると考えられ、利尻島では春~初夏に盛んとなるシベリア森林火災の年々変動が反映されていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分析法をほぼ決定できたことは大きな進展であり、この方法を使用してサンプル処理を進めることにより、札幌・利尻島の2地点における元素状炭素の沈着フラックスの経年変化が明らかにできる見通しができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、2001年と2010年、2011年のみのサンプルが分析終了したが、過去20年にわたるサンプルの分析にはマンパワーが必要となるため、研究分担者とはなってはいないものの分析能力を持つ他の大学等と連携して分析を進めることとする。また、北海道以外の地点として、アジア大陸の人為起源汚染物質がより到達しやすい地理的位置にある島根県隠岐ノ島において、札幌・利尻島と同一型のバルク沈着サンプラーを設置してサンプル捕集を開始するとともに、自治体の環境研究機関に呼びかけて、分析可能なメンプラン・フィルターの採用が広がることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
島根県隠岐ノ島におけるバルクサンプラー設置のため、既存機器の改修と設置に約20万円を使用するとともに、分析要員の人件費に約90万円を使用する。残り40万円の研究費は分析の量をこなすための体制の確立と、そのための旅費・消耗品購入に使用する。
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