研究概要 |
本研究は、東日本大震災がもたらした震災瓦礫処理に伴う飛散粉じんおよび有害汚染物質濃度の多点モニタリングと健康リスク度を可視化することをテーマに進めている。 平成25年度は、1.オリジナルの多点モニタリング手法である「ミクロ繊維シート」による飛散粉じん量濃度マップの作成、2.多環芳香族炭化水素類(ベンゾ(a)ピレン, ベンゾ(k)フルオランテン,ベンゾ(g,h,i)ペリレン)や重金属類(Cr,Pb)の分析と濃度マップの作成、3.発がんリスクに基づく各物質のリスク度評価を行った。 1.の飛散粉じん濃度マップより、瓦礫の破砕・選別処理付近および瓦礫運搬車輌の走行路近傍で高い値を示していることが確認された。また、平成24年の秋にやや高濃度が確認され飛散粉じんの影響が危惧された周辺の居住地域は、平成25年度においては低濃度で推移していることが確認された。2.の多環芳香族炭化水素類の濃度は、夏季に低く冬季に高くなるような一般的な季節変動はみられず、処理作業が最も活発であった夏季に高濃度を示し、また瓦礫運搬車輌の走行が多い地点で高くなるなど、重機の排ガスに起因していると考察された。一方、重金属類の濃度は、平成25年5、7月に瓦礫集積地内でCr,Pb濃度がやや高い値を示したものの、居住地域ではモニタリング実施月の全てにおいて低い値であった。3.のリスク度評価は、ベンゾ(a)ピレンについては、WHOの吸入ユニットリスクを基に、重金属類については、WHO(2002)の耐容一週間摂取量を基に評価した結果、健康に対して影響を与えるレベルではないと評価された。
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