研究課題/領域番号 |
24510032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大谷 修司 島根大学, 教育学部, 教授 (50185295)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 汽水域 / 宍道湖 / 植物プランクトン / ピコシアノバクテリア / 大量培養 / 応用研究 / ヤマトシジミの餌 |
研究概要 |
本研究は宍道湖産のピコシアノバクテリアや他の植物プランクトンの大量培養方法を確立し、各培養株の種名の確定をすること、ヤマトシジミの餌としての有効性を調べたり、培養株の色素組成や脂肪酸組成などを明にし宍道湖での現存量の推定に用いること、生理生態学への応用からピコシアノバクアの宍道湖での生態的な役割を明にすることなどを目的としている。 今年度は,宍道湖で優占することがあるピコシアノバクテリアSynechocystis/Synechococcus(以後SS),藍藻Microcystis ichthyoblabe(以後MI),緑藻Pseudodictyosphaerium minusculum(以後PM)の大量培養方法の確立を検討した。今回備品として購入した人工気象器LH-240Nを用いて5Lまたは10Lまでの大量培養を試みた。MIは、淡水藻類用CA培地、温度:25℃、光条件: 1500lux、12h(明)/12h(暗)の条件で、SSとPMはIMK-培地(人工海水3.3‰)、温度:25℃ 、光条件:2000lux、14h(明)/10h(暗)の条件で培養を行った。なお、5L及び10Lの培養系は常時曝気し、曝気は細菌が除去できるフィルターを通して行った.他の容器は曝気せず静置した。 MIは最初は10mlの試験管で培養し、300ml、2L、10Lと容器を少しずつ大きくしたところ、よく増殖し10Lで細胞密度200万cells/mLまでの大量培養が可能であることが示された。SSとPMは10ml試験管、30ml試験管、次いで5Lの培養器で増殖させた。その結果、今回の方法で,細胞密度がSSは4700万cells/ml,PSは1000万cells/mlまでの大量培養系が確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、ピコシアノバクテリアのSynechocystis/Synechococcus及び他2種類について大量培養を試み、5Lまたは10Lでの培養方法が確立できた。一方、珪藻のThalassiosira pseudonanaを500mlの三角フラスコで静置培養を行ったが、増殖がほとんど認められなかった。本種は500mlレベルのサイズから曝気を行う必要が考えられ、平成25年度は曝気を行いながら5L以上の大量培養方法の確立を目指す。H24年度に大量培養を実施したピコシアノバクテリアSynechocystis/Synechococcusはこれまで希釈法によりできるだけ単一種からなる培養株を作成してきたが、本属の種類は細胞の径が約1μmであり、複数の種類が混在している可能性がる。今後、現有の株をさらに希釈法を用いて複数の培養株を作成し、形態観察と遺伝子解析から単一種からなる培養株の確立をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の経験を活かし、植え継ぐ培養器のサイズを徐々に大きくすること、必要に応じて500mlのサイズから曝気を行うことを行いながら、大量培養できる宍道湖産植物プランクトンの種数を増やしていく。現有のピコシアノバクテリア培養株が4株あり、それぞれのさらなる純粋化と形態観察と遺伝子解析を行い種の同定を行う。 宍道湖では現在、ヤマトシジミの現存量が少なくなっており、その回復が大きな課題である。そのひとつの方策として有効な餌生物としての植物プランクトンを明にすることである。宍道湖では藍藻類(ピコシアノバクテリアを含む)、緑藻類、珪藻類が代表的な植物プランクトンであり、それらの同位体比(炭素および窒素)を明にすることで、ヤマトシジミの餌としての有効性を調べることが可能となる。本年度は現在保有する培養株から藍藻、珪藻、緑藻2株ずつを選び、これらの同位体比を明にすることを目的として、大谷が分析に必要量の培養を担当し、同位体比の分析は共同研究で行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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