研究課題/領域番号 |
24510035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
濱田 薫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80228535)
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研究分担者 |
須崎 康恵 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30382302)
庄 雅之 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50364063)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / 大気汚染 / 喫煙 / Th2サイトカイン / エピジェネティクス / 環境影響評価 |
研究概要 |
妊娠中の大気汚染粉塵曝露が、出生した幼若マウスの抗原感作を促進し、発育時に過度のTh2系優位状態をきたし、その後の抗原気道チャレンジによって容易に気管支喘息病態が示される(=疾患感受性が高い)ことをこれまで報告してきました。具体的には、正常妊娠Balb/cマウスの妊娠後期の出生1,3,5日前にたばこ2本分の主流煙溶出液をエロソール曝露し、出生した仔マウス(CSE群)に対し3日齢で卵白アルブミン(OVA)1㎍+Alum 0.1mgを腹腔内投与する(腹腔内感作モデル)か、あるいは出生した仔マウスに4日齢から13日齢まで連続して1%抗原溶液のエロソール曝露を行う(アジュバントを用いない局所感作=経気道感作)ことにより抗原感作を試み、5週齢で3日間抗原溶液をエロソール曝露し、その後に喘息病態を評価しました.この結果これまで報告書に公表してきたようにどちらの感作方法でも、CSE群は容易に強い喘息病態を呈し、喘息疾患感受性の亢進と評価しました。すなわち妊娠中の喫煙は次世代の喘息発症を促進することがマウスモデル実験で証明できました。 本研究課題では、妊娠中のタバコ煙曝露が次世代のみならずさらに次へ世代を超えて幼若マウスの喘息感受性を亢進させるか否かを検討し、その機序を解明することが主題です。としています。上記のモデルを用いて検討したところ、妊娠中にCSE曝露を受けた母親マウスから生まれた雌マウス(CSE/F0群)を無処置で成熟させ、健常雄マウスと交配させ、出生した仔マウス(CSE/F1群)に対し先述のプロトコールで感作を試みたところ、このCSE/F1群のマウスは無処置対照群と異なり著しい喘息病態を呈し、タバコ煙による喘息感受性亢進が次世代に引き継がれることが示されました。またこの結果はこの実験モデルは世代を超えたリスク評価に有用であることを同時に示していると考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度は予定よりやや遅延しています。この理由には研究代表者の健康問題と、実験機器の故障および陰性対照群の結果のばらつきが挙げられます。幸い①②の問題点は解決、安定し③についても実験を繰り返してプロトコールの微調整を行い、現時点では解決しています。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進展方策は、まず各評価点におけるマウスの免疫学的状態の把握で、すなわち機序の解明への試みということになります。特に、CSE/F0群およびCSE/F1群の出生直後からの背景の免疫状態の経緯について血性、血漿中の蛋白レベルでのサイトカイン産生能の評価、脾細胞のmRNAレベルでのプロファイル、CD25抗体やFoxP3抗体を用いた調節型T細胞の変化などに焦点をあてて検討する予定です。またこの喘息発症感受性の次世代への伝達はやはりエピジェネティクス変異がその役割を果たしている結果と考えられ、パイロシーケンス法を用いた解析を試みる予定です。計画の遅れを回復させ、今年度末には学会発表や紙上発表を行えるよう精力的な実施予定を検討中です。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の計画推進のための設備・機器の新規購入の必要は無く、細胞培養、脾細胞のRT-PCR解析、サイトカイン・成長因子のELISA解析などに要するいわゆる試薬などの消耗品・通常経費および人件費のみです。 動物購入・飼育費 250,000 感作・曝露など試薬実験経費50,000 病理学的評価 標本作製など100,000 免疫学的評価 ELISAキットなど400,000 DNA実験など費用 500,000 人件費 400,000 (計1,700,000円)
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