研究課題/領域番号 |
24510038
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
大野 章 東邦大学, 医学部, 講師 (40223903)
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研究分担者 |
加藤 尚之 東邦大学, 医学部, 准教授 (50104154)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Legionella pneumophila / Serogroup 1 / Type IVA分泌システム / 65kb pathogenic island / Acanthamoeba castellanii / MLST / 温泉水 / 冷却塔水 |
研究実績の概要 |
平成24年度から25年度にかけてPCR法により患者由来、温泉水由来、冷却塔水由来各SG1多数株をsubgroupに分類した。その結果患者由来と環境由来でそれぞれ優勢を占めるsubgroupが異なり、また同じ環境でも温泉水と冷却塔水由来SG1株で異なることを明らかにした。またハウスキーピング遺伝子による遺伝子型分類でも患者由来、環境由来、また環境由来でも温泉由来、冷却塔由来で特徴が異なることも明らかにした。 L.pneumophilaはゲノムサイズが3Mb強であるが、菌株特異的な遺伝子が5%程度存在することが知られている。次世代シークエンサーを用いた解析により、冷却塔由来SG1のほとんどを占めるsubgroup OLDA-Oxfordで菌株特異的遺伝子の割合が高いことを明らかにし、その中でもPCRにより環境中での生存能力に関与するTypeIVA分泌システム遺伝子群、65kb pathogenic island遺伝子群の保有率が、subgroup OLDA-Oxfordを中心とする、環境由来株で有意にが高いことを明らかにした。 またこれらの遺伝子保有株が、L.pneumophilaの自然界での寄生宿主であるAcanthamoeba castellaniiに対する増殖力において、非保有株に比べ優れていることを、同アメーバに対する拮抗感染実験により明らかにした。米国細菌学雑誌の一つApplied and Environmental Microbiologyにこれらの結果をまとめ投稿した。しかし現段階では、アクセプトに到らなかった。平成26年度では投稿雑誌レフェリーからの指摘事項に従って、すべての菌株でL.pneumophilaに共通の病原性遺伝子が保有されていることを確認し、さらにアメーバ拮抗感染実験での細かい確認実験を行なった。そして患者由来と環境由来SG1株の相違を、研究計画でやり残しているL.pneumophila感染症防除対策指針で推奨されている塩素消毒に対する抵抗性を調べる検討を平成27年度に行い、最終的に論文投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に開始したレジオネラ感染症患者由来のLegionella pneumophilaが血清型1(SG1)に集中している要因を明らかにすることを目的とした本研究は、L.pneumophila血清型1のPCR法によるsubgrouping、菌株特異的遺伝子の保有率の解析、次世代シークエンサーによるゲノム解析、Acanthamoeba castetellanniに対する菌株間の拮抗感染実験を終了し、ほぼ当初の目的を達した。そして一度論文化し米国細菌学雑誌に投稿した。しかし再投稿を推奨されたもののアクセプトには至らなかった。現在はレフェリーに指摘された事項について詳細に検討し、それに応えるべくたらざる部分の実験をしており、またさらにやり残した塩素消毒に対する抵抗性実験を行って、再度論文化投稿にむけ準備している段階である。以上の理由からおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、菌株特異的な遺伝子の中で、環境での生存に寄与すると考えられている二つの遺伝子群の存在が、Acanthamoeba castetellanniに対するLegionella pneumophila SG1菌株間の拮抗感染で有利に働くメカニズムをさらに証明しようと考えている。具体的には最新の遺伝子除去技術CRYSPR-Cas9を持ち用い、それらの遺伝子群をノックアウトし、さらに再度それら遺伝子を相補(complementation)した菌株の作成を試み、野生株とこれら欠損株、相補株によって拮抗感染実験を行う計画を考えている。それによりなぜ環境に特定のSG1 groupが集中し、臨床では環境ではマイナーなSG1 groupが優位かをさらに証明するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度においてやり残した塩素消毒に対する抵抗性実験に関する使用額が生じたこと、また論文投稿に関する英文校正費用、さらには投稿費用が未使用として残っていることが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度前半は塩素消毒実験を行い、なおかつ論文再投稿に向けた準備を行い、夏までに論文投稿する計画である。
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