研究実績の概要 |
近年,琵琶湖では,難分解性有機物の有力な発生源として考えられている微小シアノバクテリア由来の有機物の質的および量的把握が求められる。この有機物には,シアノバクテリアを構成している有機物と寒天質状の細胞外代謝産物(extracellular polymeric substances, EPS)が含まれる。微小シアノバクテリアの場合,従来法でEPSを観察することや定量することは困難であった。本研究では,微小シアノバクテリを軟X線顕微鏡で観察し,EPSを含めた微細シアノバクテリアの微細構造の把握と,含有有機物の定量を目指した。研究は,琵琶湖に生息しているPhormidium tenue (Pseudanabaena sp.)とSynechococcus sp.の2種類の微小シアノバクテリアを対象とし行われ、以下の結果を得た。 (1)未処理のP. tenueを軟X線顕微鏡で観察し,いくつかの原核細胞オルガネラを確認した。さらに,透過型電子顕微鏡,走査型電子顕微鏡および蛍光顕微鏡観察を行い,構造同定を行った。 (2)微小シアノバクテリアの3次元画像化を目指し,試料凍結装置とコンピュータ断層撮影(Computed Tomography, CT)法を導入し,P. tenueと Synechococcus sp.の3次元画像を得ことができた。 (3) Synechococcus sp.において,細胞とEPSの構成元素分析の結果とX線像からそれぞれにに含まれる有機物量を見積もり,Synechococcus sp.のPOCを,EPSを考慮し求めることができた。その値は,従来法で得られた値を基に検討した結果,十分妥当な値であると判断した。 以上より、これまで困難であったEPSを含めた微細シアノバクテリアの構造の把握と有機物量の定量のための「新しい分析法」を提供するという目的を達成することができた。
|