本事業では、申請者が提案したテッポウエビ類の発する音を1分間あたりの発音数(パルス数)で表現する新しい環境指標と沿岸域の水質環境や物理環境などの関係性について体系的に整理し、海域の環境評価システムを構築することを目的としている。本研究期間内では、パルス数の測定から以下の3つを解明する。 1.日本沿岸域のテッポウエビ類の分布:テッポウエビ類の分布を体系的に整理されたデータは存在していないため、本調査によりその分布域を明らかにする。北海道から九州の日本海側沿岸域の調査は平成26年度までに実施している。平成27年度は9月2日~4日の3日間で沖縄県沿岸部、石垣島の沿岸部7地点の測定を行った。パルス数の差はあるものの全ての地点でテッポウエビ類のパルス音を測定することができた。また、テッポウエビ類の生息にとって厳しい環境である冬期の調査を青森と函館で12月25日~26日、沖縄で3月6日~7日に実施した。この結果、冬期には青森以北ではパルス音を観測することができなかった。 2.環境変化がテッポウエビ類の生息分布に与える影響の評価:調査ではパルス数の測定距離を100 m、200 mと変化させている。しかし、測定距離の増加に対し比例して測定面積が増えず、距離の増加に対しパルス数が増加していない地点があった。地点間の比較のためGISを用いてパルス数密度(回/分/a)を算出した。算出されたパルス数密度とCODや窒素などの水質指標との関連性について分析および生息環境評価を行ったが、明確な関係性を見出すことは出来なかった。 3.水中に存在する様々な音の解析:パルス数測定と同時に収録した水中音響の周波数分析を行い、パルス音がテッポウエビ類の発したものであるかの検証を行った。この結果、収録したほぼすべてのパルス音はテッポウエビ類の発する音の特性と一致していた。
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