研究概要 |
第一に、日本の適応研究の現状と課題を明らかにし、適応策を3つのタイプと3つのレベルに分けた適応戦略の整理と提案を行っている(田村・安原, 2013; 田村他, 2014;Tamura et al., 2014)。 第二に、メコンデルタでの脆弱性評価と認知アンケート調査の分析を進めた(田村他, 2013; Tamura et al., 2013)。海面上昇や高潮などの物理影響に対して脆弱な地域を特定した。さらに、1350名(3省27地区)へアンケート調査を度実施し、地区レベルでの気候変動の認知と適応策の実態について解析を進めた。現地住民は、①季節性の洪水と壊滅的な被害を及ぼす洪水を区別している、②住民レベルでは家屋の修理や補強、高床化が3省で共通し、地域によっては洪水耐性米の導入、洪水避難用の小型船の購入などの適応策を講じ、「洪水とともに生きる(Living with floods)」ことを実践している、③一方で10年単位の降雨や災害事象の変化を実感し将来的な気候外力の増大を懸念している、ことなどが明らかとなった。 第三に、アジアの途上国における調査を行い、インドネシアでは、米供給の地域不均衡を検討し、政府による制御よりも地域、季節によるきめ細かい調整が有効なことを示した(Kawanishi and Mimura, 2013)。また、バングラデシュのクルナ市における適応策を対象に、Hallegatte (2009)が提唱する適応策の有効性に関する4つのクライテリアを用いて検討した。この結果、担当機関間の協調体制の整備と強いリーダーシップが、主流化を実現するための鍵であることが分かった(Saito, 2013)。
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