• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

化学物質リスク評価における不確実性分析に基づく基準値信頼性の分類と指標の提案

研究課題

研究課題/領域番号 24510052
研究機関国立保健医療科学院

研究代表者

大野 浩一  国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (00322834)

研究分担者 東海 明宏  大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90207522)
キーワード不確実性 / リスク評価 / 情報の価値 / 環境政策
研究概要

化学物質のリスク評価は大きく「毒性評価」と「暴露評価」に分けることができ、いずれにも不確実性が存在する。本年度は昨年度の「暴露評価」に引き続き「毒性評価」における不確実性の抽出を行った。毒性評価において不確実性が生じる項目として、非発がん影響をエンドポイントとする場合は、採用された毒性評価の種類(疫学調査、動物実験など)の定性的な不確実性、また、動物実験の場合は、NOAELを用いた評価を行っているかベンチマークドース法による評価を行っているかによる違いが大きい。NOAEL法の場合は、NOAELとLOAELの投与量の違い、あるいはNOAELが存在するか否かが大きな不確実性の要因として考えられた。ベンチマークドース法の場合は、動物実験の結果の50%値と95%下限値を採用した場合の出発点の違いにより不確実性が示されることが推測された。発がん影響を見た場合も、同様にベンチマークドース法を使用しているか否か、また結果の50%値と95%値の違いを指標とすることができる可能性が示唆された。
また、水道水中に残留する化学物質のリスク評価に必要なデータ構造を整理するとともに、考慮すべき不確実性について検討した。
日本の水質基準、米国環境庁による水質基準、欧州指令値とを比較した結果、同じ水質基準項目の基準値が異なる場合があることに加え、水質基準項目自体にも違いがあることが示された。これは、毒性評価から水質基準値設定に至るまでのプロセスの違いに原因があると考えられた。さらには、基準値設定だけではなく、その運用方法についても大きな違いがあることがわかった。
放射性物質のリスク評価に関する不確実性については、環境水に対する環境動態モデルを用いて検討した結果、放射性セシウムの分配係数に大きな不確実性が存在することが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

申請時の所属先から現在の所属先に平成24年4月に移動した。そのため、研究の立ち上げなどからスタートしているため、研究の進捗がやや遅れている。

今後の研究の推進方策

水質基準に関する不確実性分析については、これまで検討してきた定量的な指標を中心に、毒性評価に由来する不確実性を中心に検討を行う。最終的には4~5くらいの不確実性カテゴリーに分類し、どのような水質基準項目にどの種類の不確実性が大きいのかについて検討を行う。また、日本・米国・欧州などの水質基準値の違いについてさらなる検討を行い、定量的には議論できない基準値設定に対する考え方の違いや定性的な不確実性について議論を加える。さらには、基準値遵守のための運用のあり方にも各国の違いがみられていることから、このことについても考察を行う。
水源から給水・飲水までの過程を対象として化学物質暴露因子の関連構造を整理するとともに、評価構造モデルのプロトタイプを作成する。既存の事例を利用して、本モデルの適用性について考察する。
放射性物質については、セシウムを中心に環境動態モデルを用いた解析を行い、予測の不確実性について検討を行う。特に、セシウムの吸脱着機構について検討を行い、現在多くのモデルで使用されている平衡定数というパラメータ適用の妥当性について検討する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は単年度交付額よりやや多い金額を使用している。次年度使用額が生じている理由は、初年度に研究代表者の異動があり、研究の立ち上げが遅れたためである。
最終年度として、論文投稿に必要な英文校閲などに使用する。また、放射性セシウムの吸脱着に関する不確実性について検討するためにデータベースや化学形態解明モデル関連のソフトウェアの購入も検討している。さらに、これまでの2年間使用してきた消耗品を継続して購入すること、および研究発表のための旅費などについても計画している。また、研究者間での情報交換やヒアリングのための旅費も計画している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 利根川水系ホルムアルデヒド水質事故をめぐる考察と給水停止に対する住民のパーセプションについて2013

    • 著者名/発表者名
      大野浩一
    • 雑誌名

      日本リスク研究学会誌

      巻: 23(2) ページ: 81-85

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 水道側から見たホルムアルデヒド水質事故関連のリスク管理制度とその課題2013

    • 著者名/発表者名
      浅見真理, 小坂浩司, 大野浩一
    • 雑誌名

      日本リスク研究学会誌

      巻: 23(2) ページ: 71-76

    • 査読あり
  • [学会発表] 低濃度溶存態放射性セシウムの固相吸着による濃縮測定と浄水プロセスにおける挙動2014

    • 著者名/発表者名
      反保亮祐, 河畑秀晃, 大野浩一, 小沼晋, 齋藤利晃, 寺田宙, 秋葉道宏
    • 学会等名
      第48回日本水環境学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20140317-20140319
  • [学会発表] ダム流域を対象とした放射性セシウムの挙動モデル解析と分配係数の影響2014

    • 著者名/発表者名
      大野浩一, 森康二, 浅見真理, 小坂浩司, 秋葉道宏
    • 学会等名
      第48回日本水環境学会年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20140317-20140319
  • [学会発表] Questionnaire survey on water ingestion rates for various types of liquid and the seasonal differences between summer and winter2013

    • 著者名/発表者名
      Ohno K, Asami M, and Matsui Y
    • 学会等名
      Society for Risk Analysis 2013 Annual Meeting
    • 発表場所
      米国・ボルチモア
    • 年月日
      20131208-20131211
  • [学会発表] Behaviour of low level radioactive caesium ion during conventional water purification processes2013

    • 著者名/発表者名
      Ohno K, Ogata T, Kawamura S, Sato H, Kosaka K, Asami M, Terada H, Akiba M
    • 学会等名
      8th IWA Micropol & Ecohazard 2013
    • 発表場所
      スイス・チューリッヒ
    • 年月日
      20130616-20130620
  • [学会発表] ダム流域を対象とした放射性セシウムの挙動解析 -分配係数の影響について-2013

    • 著者名/発表者名
      大野浩一、浅見真理、小坂浩司、秋葉道宏、欅田尚樹、森康二、西岡哲
    • 学会等名
      第2回環境放射能除染学会研究発表会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130605-20130607

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi