研究課題/領域番号 |
24510056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
柏谷 至 青森大学, 社会学部, 教授 (50316329)
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研究分担者 |
渋谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
中村 和生 青森大学, 社会学部, 准教授 (70584879)
佐々木 てる 青森大学, 社会学部, 准教授 (70396597)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境配慮行動 / 文化的フレーム / 意思決定モデル / 地球温暖化 / 省エネルギー / 再生可能エネルギー / 質問紙調査 / 北東北 |
研究概要 |
本研究は、地球温暖化防止をめぐる環境配慮行動を理解するための統合的な説明図式を構築し、社会調査を通じてその有効性を検証することを目的としている。より具体的には、(1)温暖化防止のための環境配慮行動をめぐる代表的な文化的フレームを解明すること、(2)情動選択性理論の環境配慮行動への適用可能性について、理論的・実証的考察を加えること、(3)文化的フレームおよび意思決定モデルを組み込んだ環境配慮行動の説明図式を構築し、これに基づいてデザインした質問紙調査の結果からその有効性を実証することが、研究の目標である。 本研究は、環境配慮行動についての社会心理学的な説明に、一方では文化的フレームというマクロ社会学的な要素を、他方では社会情動的選択性という認知心理学的な要素を導入する点に、理論上の特色を持つ。また研究計画で後述するように、エネルギー問題の文化的フレームが大きく変動したと思われる東日本大震災の直後に、北東北を調査地とする社会調査によって、人びとが特定の環境配慮行動をとる (あるいは取らない) メカニズムを実証する点も、本研究の特徴と言える。さらに本研究は、温暖化防止のための環境配慮行動を促進するための効果的な方策を提示するという、実践的意義を持つものでもある。 平成24年度は、本調査の準備段階として、文化的フレームに関する理論的研究、および地球温暖化問題と環境配慮行動に関する文化的フレームの分析を行った。フレーム概念の検討作業からは、メディア・フレームとオーディエンス・フレームを軸としたメディア研究を社会運動の経験的研究に応用する可能性を示唆することができた。また、同年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入後の動向、および家庭用太陽光発電設備の導入経験者からのインタビュー結果から、再生可能エネルギー施設への投資行動の文化的フレームが大きく変動しつつあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、インタビューと参与観察調査、および質問紙を用いた予備調査を行う予定であったが、実際にはこれに加えてフレーム概念についての理論的研究を行った。平成24年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入以降、太陽光発電を中心に再生可能エネルギー施設の導入が一気に拡大したが、本研究における文化的フレーム分析においても、社会運動の提示するフレームだけではなく、広告を含めたマスメディアが提示するフレームも分析対象とする必要があると判断したためである。 メディア研究におけるフレーム概念の理論的・実証的研究成果を検討することによって、次年度の質問紙調査に向けた理論モデルを精緻化することができたと評価している。他方、当初予定していた予備調査は実施できなかったが、これは研究計画全体の遅れを生じさせることなく次年度に実施可能なものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、前年度実施できなかった予備調査 (質問紙調査) を実施するとともに、年度の後半で本格的な質問紙調査を実施する予定である。 本調査の調査地としては青森県青森市と北海道函館市を予定していたが、サンプリング台帳として選挙人名簿を利用する場合に、自治体によっては抽出できるサンプルの総数に制約があることが分かった。そのため、調査地点として青森県八戸市、岩手県盛岡市、秋田県秋田市を追加し、計5都市の選挙人名簿からの無作為抽出を行うことで、サンプル総数を確保することとした。 平成26年度は当初の予定通り、本調査の結果を分析するとともに研究成果についての学会発表及び論文執筆・投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に申請した予算額のうち、予備調査に関する旅費、人件費・謝金、その他経費 (印刷費・郵送費等) を25年度に使用することとする。サンプリング作業の実施地点が増えることで旅費の追加支出が見込まれるが、予備調査の実施経費を節約することで、当初設定していた25年度分の研究経費の範囲内で予備調査・本調査をともに実施できる予定である。
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