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2012 年度 実施状況報告書

住民の世帯間交渉と意志決定からみた汽水漁場の持続的な利用条件の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24510058
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東海大学

研究代表者

小林 孝広  東海大学, 海洋学部, 講師 (50386653)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード地域組織化 / 汽水域 / 意思決定 / 世帯生計戦略 / 地域比較
研究概要

本研究は、汽水漁場の持続的な利用条件を、外部経済を媒介する各漁家世帯の意志決定プロセスに加え、特に、世帯間交渉(住民の組織化とその運用戦略)に照準を合わせ、汽水漁場の持続可能性を地域の特性を加味しながら検討することを目的としている。
本研究では、フィールドワークもとづき、世帯活動の民族誌的分析を通して、漁場の過剰利用の実態とそれを生み出す地域の特性を分析する。3年の予定で次の3点の解明をめざしている。(1)汽水漁場の「過剰」利用の実態把握、(2)各世帯の資源利用と経済活動の多様性とそれら世帯生計戦略を支える価値や規範、(3)汽水漁場の利用秩序と世帯間の交渉、地域特性の機序。
研究の初年度にあたる2012年度は、(1)そもそも漁場の「過剰」利用の実態とはいかなるものであるかを主題としながら、漁場の過剰さを訴えているものそのそもそもはだれか。過剰さが意味するものはいったい何か。養魚池の拡張とカキ養殖ブームは過剰利用にどう関連してくるか。行政が果たした役割はどのようなものであるか。これらの点に留意しながら、イビサン町(2007-2009年に主に調査を実施した)とアルタバス町の漁場の実態把握に努めた。具体的には、それぞれの町に位置する特定範囲の汽水漁場における漁具台帳のリスト化と漁具のロケーションマップの作成作業を行った。このマップが、次年度以降の世帯生計戦略の聞き取り調査の基礎資料となる。また、マップ作成作業においていずれの地域においても、土砂の堆積とそれに伴う水位低下を引き起こしており、漁場環境の悪化を将来していることが分かった。またそれが地域イシューになっている。イビサン町は2008年に同様の調査を実施しているため経年変化を読み取ることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画では、2012年度に調査対象として限定したイビサンとアルタバス町の漁場に展開する定置漁具tabaをGPSを利用しながら、(1)漁具設置空間の確定を行い、あわせて(2)関連世帯の聞き取り調査を実施することを予定していた。具体的には、(2)各世帯の資源利用と経済活動の多様性とそれら世帯生計戦略を支える価値や規範を明らかにするために、主にアルタバス町を中心にして、漁家世帯はどのような資源を利用し、どのような経済活動を組み合わせて生計戦略を組み立てているのかについて、あわせて調査を実施予定であったが、調査対象集落の選定に予想外に時間がかかったため、今回は(1)の生業景観の記述に重点を置き、(2)については十分な調査が実施できておらず、次年度に繰り越すこととなった。

今後の研究の推進方策

2012年度に、十分実施できなかった(2)各世帯の資源利用と経済活動の多様性とそれら世帯生計戦略を支える価値や規範について、特に両地域の地域イシュー(土砂堆積による漁場環境の悪化)に直接関連するといわれるエリ漁(taba、tigbakoe)とカキ養殖漁家世帯に対象を絞って明らかにする。また、2013年度に調査を予定していた(1)アルタバス町における漁具区画整理事業のプロセス解明、(2)世帯間の交渉と地域特性生成の機序も、エリ漁とカキ養殖世帯を中心に明らかにしていく。具体的には(1)漁場の過剰利用を防ぐための組織的な取り組みの事例として、2007年にアルタバス町において実施された設置漁具区画整理事業を取り上げ、既存文書資料と関係者の聞き取りから時系列に復元する。また、(2)各世帯生計戦略は、対象漁場を「共に利用する」という点で、それぞれどのような関わり合いをもっているかについて、そこにみいだせる共同性とはいかなるものであるか、漁場利用の秩序形成と世帯間交渉はどのような関係にあるのか、世帯間交渉のどのような要素が、漁場過剰利用に対する行動を規定しているのか、着目しながら明らかにしていく予定である。地域イシューを構成する2種類の漁家世帯(tabaとカキ)に限定することによって、クリアカットした形で研究課題に取り組みたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

主に現地調査のための旅費として使用する予定である。概要に関しては、次の通りである。漁村調査:フィリピン共和国カピス州イビサン町及びアクラン州アルタバス町
調査期間:8~9月と3月(計28日)、渡航経路:成田=マニラ = ロハス=イビサン・アルタバス。
ただし、本研究は調査を主体とした研究であり、旅費を除いて特別の設備・備品は必要としないが、(1)専門知識提供に対する経費と(2)図書・資料入手の経費、特に文書資料については現地でしか手に入らないものが多く、それらの図書の購入が不可欠になる。また、行政機関や情報機関の利用による情報収集では、規定の利用手数料を資料提供代として支払う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 土砂堆積に対する漁民組織の対応に関する予備的考察―フィリピン・パナイ島・バタン湾の事例から

    • 著者名/発表者名
      小林孝広
    • 学会等名
      地域環境知プロジェクト・地域環境学ネットワーク合同ポスターセッション「地域課題解決のための事例研究」
    • 発表場所
      御所西京都平安ホテル(京都)

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公開日: 2014-07-24  

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