この研究は、フィリピン・ビサヤ地方の汽水域漁民の組織化とその運用に着目し、漁場の持続的利用の条件を探ることが目的である。調査対象の漁場では設置漁具の区画整理事業により漁場の過剰利用が助長され、土砂堆積が問題化している。関係するカキ養殖漁民は、漁場環境の悪化と生活の持続というジレンマに陥っている。その解決としての垂下式カキ養殖に取り組むボランタリーな漁民組織は、行政や国際ボランティア組織の援助をうまく取り込みながらも、自律的な活動を行っている。彼らの取り組みいまだ小さく、主流派をなしていないが、確実に在地の生活保障を取り込んだボトムアップ型のコモンズを生み出しているといえる。
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