本研究課題では、CO2排出量の効果的削減に向けて具体的な支援策を提言するために、方法論の開発と実証分析を行うこと、具体的には、産業連関分析の理論とライフサイクル分析のための可視化ツールを融合した、新しいフロー可視化手法の開発を行うことを目的としている。また、開発した可視化手法をサプライチェーンについての実証分析に応用し、「地域間での相互依存関係」「産業間での相互依存関係」「ライフサイクルCO2排出量の削減にとって鍵となる産業連携」を明らかにすることを目的としている。今年度は応用分析を中心に実施しつつ、手法開発も実施した。 本研究課題における手法開発は、(1)サプライチェーンを把握するための数理モデルの構築、(2)数理モデルに基づいて産業連関表を分解するための諸条件の策定、(3)分解結果に基づく可視化(作図)から構成される。昨年度までに(1)から(3)をほぼ完成させたが、応用分析を進めるなかで必要性の認められた点について、さらに開発を行った。具体的には、CO2排出や資源循環の観点から見た地域間・産業間フローの脆弱性や潜在的改善可能性を定量化し、その結果をフロー図(サンキー図)に盛り込んで表示する手法を開発した。また、我が国の産業連関表に基づいてCO2排出量データを整備する際に、産業連関表の付帯表(自家輸送マトリックス)を活用する手法を開発した。 応用分析については、開発した手法を国際産業連関表データ(WIODおよびGLIO)に適用して、温室効果ガスの観点から見た各国の家計消費を支えるサプライチェーンの同定と可視化、および国際資源循環の観点から見た日本経済を支えるサプライチェーンとその潜在的改善可能性の同定と可視化を行った。学会発表などを通して、開発した手法の有用性、とくに分析結果に基づく関係者間の意見交換に貢献し得ることが確認された。
|