研究課題/領域番号 |
24510062
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上原 芳彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30223499)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 概日リズム / 遺伝子発現 / 放射線 |
研究実績の概要 |
放射線被ばくによる障害の代表的なものとして発癌があげられる。一方、生物は24時間周期の概日時計を持っており、その周期の乱れが発癌に関与していることも明らかにされている。また、放射線照射により概日リズムが変化することも報告されてはいるがその詳しいメカニズムについては分かっていない。本研究では、マウス肝臓における網羅的な発現解析により概日的に発現が変動する遺伝子の中から放射線照射によってその発現が変動するものを選択し、それらの中からsiRNAを用いた解析によって概日発現の変化に主要な役割を果たしている遺伝子を見つけ出し、放射線照射によって概日遺伝子発現が変動するメカニズムの解明を目指す。昨年度までに、概日的に発現が変動する遺伝子群の中で放射線照射によりその発現リズムが変化する遺伝子を以下のような方法で選別した。12時間明期(7-19時)、12時間暗期(19-7時)の環境で2週間飼育した7~8週齢雄マウスに、明期が始まってから6時間後の概日6時(午後1時)にX線全身照射(4Gy)を行う。照射後概日12時(午後7時)から継続的な暗期状態で48時間飼育し、照射後3日目の概日0時(午前7時)、概日6時(午後1時)、概日12時(午後7時)、概日18時(午前1時)にマウスを屠殺、採取した肝臓よりRNAを 抽出し、Affimetrix Mouse Genome 430 2.0 アレイを用いて網羅的な発現解析を行うことにより、約300個の遺伝子を選別した。本年度は、それらの遺伝子の機能アノテーション解析を行って候補遺伝子の絞り込みを行い、培養細胞の概日リズム変動にそれらの遺伝子が及ぼす影響の確認実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度までに、概日的に発現が変動する遺伝子群の中で放射線照射によりその発現リズムが変化する遺伝子を選別する目的でマイクロアレイを用いた網羅的な発現解析を行い、約300個の遺伝子を選別した。本年度はそれらの遺伝子の機能アノテーション解析を行ってより可能性の高い候補遺伝子の絞り込みを行った。さらにそれらの絞り込んだ候補遺伝子が培養細胞の概日リズム変動に及ぼす影響に関する実験を行い、全ての候補遺伝子についての確認を行う予定であったが、安定した分析結果が得られなかったため一部の遺伝子についてしか確認実験が終了していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験計画として、マイクロアレイ解析によって選別した後、機能アノテーション解析を行って絞り込みを行った候補遺伝子について、放射線照射による概日リズム発現の変動を制御している可能性について以下のような方法で明らかにしたい。 概日リズムに中心的な役割を果たしているPerのプロモーターにレポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子をつないだものを培養細胞内で発現させ、発現リズム同調薬剤処理後、経時的にルシフェラーゼの発現をモニターすると、放射線照射によりその発現周期が短くなることを既に確認した。そこで絞り込みを行った候補遺伝子について、その発現レベルをsiRNA によって低下させることで、放射線照射によるPerプロモーターの発現周期の短縮が回復するかどうか調べることにより、放射線による概日リズム変動に中心的な役割を担っている可能性の高い遺伝子の選択、確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、放射線による概日リズム発現変動に関与する可能性のある候補遺伝子の絞り込みを行った。それらの遺伝子についてルシフェラーゼによる発現モニター分析を行うことによりその可能性について確認を行い、結果をまとめて学会発表を行う予定であったが、安定した分析結果が得られず実験条件の再検討を行う必要が生じ、結果として計画に遅れが出て未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度中に行う予定であった in vitro 発現モニター分析による候補遺伝子の確認作業とその結果のまとめ、及びその結果についての学会発表を平成27年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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