研究課題
がんの放射線治療は全身への負担が小さく、優れた治療法であると考えられる。しかし、放射線治療の最大の難問は放射線抵抗性のがん細胞の存在であり、放射線治療後のがんの再発の原因となる。腫瘍は均一な集団ではなく、自己複製能と腫瘍形成能を併せ持つ細胞群、がん幹細胞が含まれると想定され、がん幹細胞は、放射線治療に抵抗性を示す。我々はがん幹細胞の放射線抵抗性の特性を利用し、ヒト肝がん細胞株HepG2にX線を繰り返し照射し、非がん幹細胞を死滅させ、放射線耐性のがん幹細胞を約90%にまで濃縮した。我々が濃縮したがん幹細胞を用いて放射線応答を解析し、親株のHepG2細胞では細胞死が誘導される5GyのX線照射後、がん幹細胞では、細胞の生存シグナルAKTが活性化され、細胞死の誘導が起こらないことを明らかにした。さらに、がん幹細胞をヌードマウス皮下に移植し、生体内における放射線耐性を検討した。親株細胞から作成した腫瘍では、X線照射(3Gyx7回)によって、腫瘍体積の縮小が観察された。一方、我々が濃縮したがん幹細胞から作成した腫瘍では、同様の照射条件で抗腫瘍効果が観察されず、放射線耐性を示した。ヒト腫瘍片の解析とin vitroの培養細胞の解析を用いて、AKT阻害剤(API-2)と放射線の併用によりAKTの活性化を阻害することで、がん幹細胞の放射線耐性が抑制されることを明らかにした。AKTは細胞増殖、細胞死の抑制とともに、グルコースの代謝を制御する。正常細胞とがん細胞では、代謝機構が異なるため、がん細胞の代謝阻害により、正常細胞の副作用を抑えた放射線耐性の抑制法を検討した。我々は、グルコースの拮抗阻害剤2-デオキシグルコース(2-DG)でがん細胞のグルコースの代謝を阻害することで、がん幹細胞の放射線耐性が抑制されることを明らかにした。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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